第十四和 衣替えと心変わり
秋の冷え込みが本格化し、学校でも制服の衣替えの時期を迎えていた。
「……陸兄さん、ネクタイ、曲がっていませんか?」
朝のリビングで、高校のブレザー制服に身を包んだ結衣が、小さく背伸びをしながら俺の首元に手を伸ばしてくる。
夏場のノースリーブワンピース姿に比べて露出は減ったはずなのに、ブレザーを着た彼女からは、どこか今までと違うしっとりとした大人びた空気が漂っていた。そして何より——
(……近い。いや、距離感そのものが明らかに変わってる……!)
以前、葵が部活の合宿で不在だったあの日。シャワー上がりの俺を膝掛けごと抱きしめ、二人きりで甘い熱を分け合ったあの夜以来、結衣の「距離」は一段と縮まっていた。
ポーカーフェイスの無表情さは相変わらずだが、ネクタイを整えるその指先はどこかぎこちなく震えており、至近距離から伝わってくる彼女の鼓動はトクトクと速い。
「あ、ありがとう結衣。……でも、自分でできるぞ?」
「……私がやりたいんです。ダメですか?」
上目遣いにじっと見つめられ、俺は思わず言葉を詰まらせる。かつてはただ無言で服の裾を摘んでいただけだった結衣が、今ではこうして自分の気持ちを少しずつ、けれど確かに言葉にして伝えるようになっていた。
「……結衣姉! 陸兄ちゃん! あたしの制服のスカート丈、短すぎないかな!?」
そこへ、中学の冬制服に着替えた葵がバタバタと廊下から駆け込んできた。結衣より小柄なものの、相変わらず抜群のプロポーションが制服の上からでもはっきりと分かり、健康的な魅力があふれている。
「……葵。スカートの丈は正常です。ただ、陸兄さんに抱きつくのは自重してください」
「えー! 結衣姉だって陸兄ちゃんのネクタイいじるフリして胸元に密着してるじゃん!」
「……っ! こ、これは必要なサポートです……!」
珍しく結衣の白い頬が、ブレザーの襟元まで綺麗な薄桃色に染まっていく。
「陸! 遅れるわよ、早く行きましょう!……って、ちょっと二人とも朝からなにやってんのよー!?」
玄関のドアが開くのと同時に、冬制服を着こなした凛が飛び込んできた。




