第九話 スポーツの秋 リビング編
爽やかな秋晴れの日曜日。我が家には、なぜか激しい緊張感が漂っていた。
「陸兄ちゃん! いくよ、絶対負けないんだから!」
体育館履きにジャージ姿の葵が、リビングの真ん中でビシッと指を突きつけてくる。
「……陸兄さん。私は身体を動かすのは得意ではありませんが、負けるつもりはありません」
同じくジャージ姿の結衣が、ポーカーフェイスのまま静かにメラメラと闘志を燃やしている。
「ちょっと待ちなさい二人とも! 陸とペアを組んで近所の秋フェス・スポーツ体力測定に参加するのは、この私なんだから!」
そこにハチマキを巻いた凛がバタバタと乱入してきた。
事の発端は、町内会が主催する「秋のペアスポーツ大会」の招待状だった。優勝賞品は高級肉のカタログギフト。食費を浮かせたい俺と、陸の隣を狙う三人の思惑が激突した結果、我が家で「予選会」が開催されることになったのだ。
種目は第一競技、腕立て伏せ。
「あはは! 陸兄ちゃん、グラマーになってもあたしの運動神経は落ちてないんだから!」
葵が軽快に腕立てを重ねていくが、そのたびに豊満に成長した胸元が激しく揺れ、ジャージの生地をパツパツに押し上げている。
「うわっ……葵、刺激が強すぎる! 目をどこにやればいいんだよ!」
「〜〜〜っ!? 葵ちゃんずるい! 陸、そっち見ちゃダメ! 私だけを見なさいってば!」
真っ赤になった凛が慌てて俺の視線を遮ろうと割り込んでくるが、自分もドタバタと体力を消耗して息を切らせている。
「……陸兄さん。私は、柔軟性で勝負します」
結衣がポーカーフェイスのまま、驚異的な柔らかさで前屈を披露し、そっと俺の手に触れてきた。
「……ん。陸兄さんの隣は、渡しません」
「~〜〜っっ! 結衣ちゃんまでどさくさに紛れて抱きつかないのっ!」
結局、騒ぎすぎて全員体力を使い果たし、リビングで雑魚寝する羽目に。
「……はぁ、スポーツの秋っていうより、理性の限界に挑む秋だな……」
大の字になって天井を見上げる俺の横で、真っ赤になって息を整える幼馴染と、ぴったり寄り添う義妹たち。俺の過酷で甘い季節は、秋になっても終わる気配がなかった。




