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謁見・ハンナと天皇(1941年冬)
宮中の謁見室。
ハンナ・ライチュは入室前に一度、深呼吸をした。
天皇に会う。東洋の王。ヒトラーが「肌で感じてきてくれ」と言った人物。
自分は値踏みしに来た——そのつもりだった。
扉が開いた。
知仁が椅子に座っていた。
ハンナは歩きながら、相手の目を探した。権力者の目——威圧か、あるいは計算か。
しかし知仁の目は、そのどちらでもなかった。
ただ、静かだった。
深い湖の底のような静けさだった。
ハンナは気づいたら、深々と頭を下げていた。
値踏みしようとしていたことを、その瞬間に忘れた。
通訳を通じて、知仁が言った。
「遠いところをよくいらっしゃいました。空の旅は、いかがでしたか」
ハンナは顔を上げた。




