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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第12章 世界が動く
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謁見・ハンナと天皇(1941年冬)

 宮中の謁見室。


 ハンナ・ライチュは入室前に一度、深呼吸をした。


 天皇に会う。東洋の王。ヒトラーが「肌で感じてきてくれ」と言った人物。


 自分は値踏みしに来た——そのつもりだった。


 扉が開いた。


 知仁が椅子に座っていた。


 ハンナは歩きながら、相手の目を探した。権力者の目——威圧か、あるいは計算か。


 しかし知仁の目は、そのどちらでもなかった。


 ただ、静かだった。


 深い湖の底のような静けさだった。


 ハンナは気づいたら、深々と頭を下げていた。


 値踏みしようとしていたことを、その瞬間に忘れた。


 通訳を通じて、知仁が言った。


「遠いところをよくいらっしゃいました。空の旅は、いかがでしたか」


 ハンナは顔を上げた。

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