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麻子、危機一髪(1941年秋)
五日目。
麻子が帰ろうとした時、ゾルゲの部下が扉を塞いだ。
二人いた。大柄だった。
「少し話を聞かせてもらえますか」
麻子の心臓が跳ねた。
(竹田少佐……)
その瞬間、廊下の窓ガラスが割れた。
竹田が飛び込んできた。
三分後、麻子と竹田は路地を走っていた。
「怪我はないか」
「……ないです。でも、足が」
「震えているか」
「はい」
「初めてはそうだ」
竹田は走りながら麻子の手を引いた。
麻子は竹田の手を握り返した。
気がついたら、そうしていた。
翌日、SSS司令部で。
麻子が報告書を書いていた。
竹中が入ってきた。
「昨日の件、報告書を見た」
「はい」
「よくやった」
麻子は少し間を置いた。
「……竹中中佐、一つ聞いていいですか」
「何だ」
「竹田少佐は、私が危なくなるとわかっていたんですか」
「わかっていた」
「なぜ言わなかったんですか」
「言ったら行かなかっただろう」
麻子はしばらく竹中を見た。
「……本当に悪魔ですね」
「竹田に言われ慣れている」
「みほさんにも言われているでしょう」
「最近、言われなくなった」
竹中は静かに答えた。
麻子はその言葉の意味を、少し考えた。そしてニヤけた。




