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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第12章 世界が動く
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麻子、危機一髪(1941年秋)

 五日目。


 麻子が帰ろうとした時、ゾルゲの部下が扉を塞いだ。


 二人いた。大柄だった。


「少し話を聞かせてもらえますか」


 麻子の心臓が跳ねた。


 (竹田少佐……)


 その瞬間、廊下の窓ガラスが割れた。


 竹田が飛び込んできた。


 三分後、麻子と竹田は路地を走っていた。


「怪我はないか」


「……ないです。でも、足が」


「震えているか」


「はい」


「初めてはそうだ」


 竹田は走りながら麻子の手を引いた。


 麻子は竹田の手を握り返した。


 気がついたら、そうしていた。


 翌日、SSS司令部で。


 麻子が報告書を書いていた。


 竹中が入ってきた。


「昨日の件、報告書を見た」


「はい」


「よくやった」


 麻子は少し間を置いた。


「……竹中中佐、一つ聞いていいですか」


「何だ」


「竹田少佐は、私が危なくなるとわかっていたんですか」


「わかっていた」


「なぜ言わなかったんですか」


「言ったら行かなかっただろう」


 麻子はしばらく竹中を見た。


「……本当に悪魔ですね」


「竹田に言われ慣れている」


「みほさんにも言われているでしょう」


「最近、言われなくなった」


 竹中は静かに答えた。


 麻子はその言葉の意味を、少し考えた。そしてニヤけた。



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