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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第12章 世界が動く
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歓迎晩餐会・麻子とハンナ(1941年冬)

 その夜、宮中で晩餐会が開かれた。


 ハンナの隣に座ったのは、麻子だった。


 乾杯が終わり、料理が運ばれてくる頃——麻子がドイツ語で、


「南回りで飛ばれて来たそうですね。機体は何を」


 ハンナの目が光った。


「貴方のドイツ語、英国訛りがあるわ。ハインケルHe111よ。改造して航続距離を伸ばした。インド洋の区間が一番長くて——」


「燃料はどこで」


「アデンとコロンボ。ボンベイでも入れた。風向きを読んで飛べば、思ったより楽だったわ」


「向かい風の区間は」


「紅海を抜けるところ。あそこだけ二時間余計にかかった」


「アデンの少し手前から高度を上げれば、風の帯を外せます」


 ハンナは少し驚いた顔をした。


「……あなた、飛ぶの」


「少しだけ」


「少しじゃない顔をしているわ。イギリスは長かった?」


「ハイ、まあまあ」


 麻子は微かに答えながら笑った。


 話は尽きなかった。


 発動機の話、翼の設計の話、高高度飛行の話。


 ハンナが身を乗り出した。


「ドイツで今、面白いものを開発しているの。回転翼の機体——ヘリコプターと呼んでいるけど」


 麻子の表情が変わった。


「フォッケ・アハゲリスですか」


「知っているの」


「資料だけ。実機は見たことがありません」


 ハンナは少し間を置いた。


「垂直に上がって、その場で止まれる。飛行機とは全然違う乗り物よ」


「どんな使い方を想定していますか」


「救難、偵察、物資輸送——可能性はいくらでもある。ただまだ燃費も航続距離も短くて」


 麻子はしばらく考えていた。


「日本でも研究したいと思っていました」



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