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バルバロッサ決定・ゾルゲ事件前夜(1941年)
カイテルが頷いた。「赤軍の実態はフィンランドで明らかになっています」
ヨードルが続けた。「電撃戦が機能すれば、史上最大の包囲殲滅が実現します」
「三方向からの同時侵攻——北方、中央、南方。理論上は成立します」とブラウヒッチュ。
ハルダーは黙った。
「諸君の懸念は聞いた。しかし躊躇が一番危険だ。ソ連に準備の時間を与えるな」
部屋の空気が決まった。
ハルダーは手帳に一行書いた。
――バルバロッサ、実行決定。一九四一年五月。ドイツの明暗が分かれる。
ペンを置いたとき、マンシュタインの顔が頭に浮かんだ。冒険だ、と言っていた。その通りだ、とハルダーは思った。
―――
1941年秋。朝、みほが来なかった。
「みほさん、熱が出たそうです。三十九度二分」
「……作戦は」「明後日のゾルゲ組織への潜入です。みほさんが心理分析担当で」
「代わりは」
「……私しかいません」と麻子。
「CQBはできるか」「できません」「頭だけで行け。体は使うな」
「……竹中中佐、私、現場は初めてです」「知っている」
「怖いです」「知っている」
「それでも行けと?」「竹田がついている」
「……わかりました」




