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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第一部 兆し
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06:00(皇居 天帝の私室)

 知仁は動かなかった。


 是清も動かなかった。


 須知が定期的に部屋を出て、また戻ってくる。その度に短い言葉を耳元で告げる。


「岡田邸、完了」


 知仁は頷かなかった。ただ聞いた。


 少し経って、また須知が戻る。


「牧野別邸、完了」


 是清が静かに茶を一口飲んだ。


 また須知が戻る。


「斎藤邸……」


 須知が一瞬だけ間を置いた。


「犠牲が出ております」


 知仁は目を閉じた。


 しばらく、誰も何も言わなかった。


 知仁が目を開いた時、表情は変わっていなかった。


「そうか」


 それだけだった。


 是清はその横顔を見た。


 長年、多くの政治家を見てきた。


 しかしこれほど静かに重いものを背負う者を、是清は知らなかった。


(俺はこれまで天帝の何を見てきたんだ。これほど有能な部下を言葉無しに・・・神はこれほどの才を天帝にお与えになったのか・・・でも重い)


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