05:40(岡田邸)
岡田邸の周囲はすでに静まり返っていた。
雪が屋根を白く染めていた。まだ夜明け前だった。
竹中は路地の角で止まった。竹田が並ぶ。
向こうの屋根の上に、かすかな人影があった。SCSの狙撃手だ。もう一名は路地の反対側にいる。合図はない。ただそこにいる。
「反乱軍はどこだ」
竹中は歩きながら言った。
「岡田邸まで十分。チームは三手に分かれている」
「狙撃手は?」
「二名。屋根と路地の角。反乱軍の指揮官を狙う」
竹田は前を向いたまま言った。
「目標の無力化だ。それだけだ。ただ……」
竹中はわずかに間を置いた。
「どんなに訓練していても100%はない。万一は万一だ、それはそれだけだ」
竹田は何も言わなかった。
「指揮官が倒れれば現場が混乱する。その間に計画が頓挫する。こういう蛮行をさせないのが第一だ」
「要人は」
「守れる隙ができれば、救出はするが、あくまでも第二だ。あくまでも第一は二度とテロを起こさせない事即ち頓挫させる事。計画を狂わせる」
竹田は少し考えて、言った。
「時にお前の顔が悪魔に見えることがある。今はその顔だな。犠牲が出る覚悟なんだな?その悪魔顔嫌になれないのが腹立たしい」
「そんなに誉めるなよ。出来るだけは犠牲者は少なくしたいって、俺も心中では祈ってるさ」
「俺は犠牲者は少ないほど良いと思っている。それでも、お前に付いていってしまう。俺の良心を返してくれって。ああお前に言っても無駄か」
竹中は緊張の中、緊張をほぐそうとしてくれる友に感謝しながら、力を振り絞って反芻しながら、
「反乱が成功すれば、もっと多くが死ぬ。それを止めるためには悪魔でもなる。付いてきてくれ、竹田!」
夜明けの空が、わずかに白んでいた。
遠くで銃声が聞こえた。
竹中は足を止めず、ただ言った。
「始まった」




