翼と砲・山口少将の実証(1940年初夏)
1940年初夏。四国・宿毛沖。
標的艦として用意された老朽戦艦の周囲に次々水柱が上がる。模擬弾が甲板に着弾していった。
「命中、確認」
艦橋から見下ろしていた戦艦主流派の将官が、苦々しげに呟いた。
「艦載機だけで、これほどの精度が出るとは」
「山口少将の部隊です。急降下爆撃の訓練を、この半年、徹底してきた部隊だそうです」
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山口多聞は、飛龍の飛行甲板上で部下たちを見渡した。
「戦艦の主砲がなくとも、艦載機だけで、戦艦のアウトレンジで戦艦を沈められる——それを、誰の目にも疑いようのない形で、示す必要がある」
「戦艦主流派は、まだ、納得していません」
「当然だ。奴らの世界観の根幹を、揺るがす話だからな」
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その日の午後、着艦に失敗した一機が海面に不時着水。搭乗員一名が重傷を負った。
「この程度の犠牲は、覚悟の上だ。新しい戦い方を切り開くには、試行錯誤でそれなりに痛みが伴うもんだ」
「それでも、続けますか」
「むろん、続ける。ここで止まれば、失った搭乗員への申し訳が立たない」
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竹中は報告書を読みながら言った。
「山口少将の仰る通りだ。新しい戦い方を切り開くのに、犠牲がゼロで済むとは思えない」
「戦艦主流派の抵抗は」
「まだ、根強い。だが、これだけの実証を積み重ねれば、いずれ、数字が物を言うようになる。急いては、事を仕損じる。山口少将には、このまま、続けていただこう」




