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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第12章 世界が動く
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遣欧艦隊・ロンドンとベルリンの反応

「イギリスは嫌がりませんか」


「嫌がる。しかし文句は言えない。通商保護という名目がある。インド洋は公海だ。イギリスが『嫌だが文句が言えない』状況を作ることが大事だ」


―――


 艦隊が神戸港を出て、南に向かった。ゆっくりと、しかし確実に。


 寄港地ごとに、地元紙が報じた。「日本海軍の親善訪問」


 インドのボンベイでは、波止場に人が集まった。艦長は甲板を開放した。人々が乗り込んできた。子供たちが砲身を触った。その写真が、翌日のインドの新聞に載った。


―――


 ロンドンで、チャンバレンはその記事を見た。しばらく黙っていた。


「日本の親善航海です。問題はありません」


「そうだな」


 チャンバレンは窓の外を見た。


(日本は動いている。静かに、しかし確実に。我々が気づかない間に)


―――


 数日後、ベルクホーフ。ヒトラーは報告書を読み終えて、しばらく黙っていた。


「日本の軍艦が神戸からスエズまで——何日かかった」


「寄港込みで約三週間です」


「日本艦隊が寄港した港は、全て空路の中継地としても使えます」


 ヒトラーは窓の外を見た。


「ハンナは来ているか」


―――


 ハンナ・ライチュがその席に呼ばれた。


「南回りで日本まで飛んでみないか。アデン、ボンベイ、コロンボ——日本の軍艦が友好的な餌を捲いてくれた」


 ハンナは地図を指でなぞった。


「……面白い。空路として成立するかどうか、私が確かめるということね」

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