観戦武官報告・フィンランド講和(1940年春)
観戦武官からの報告が、毎日届いた。
「やはりソ連軍指揮系統が硬直しています。現場の判断が全くできないようです。スターリンの粛清で有能な将校がほぼいなくなっています」
「要は『裸の王様』か。補給の方は」
「最前線まで届いていない。冬季装備も不十分です」
(ノモンハンで見えていたものが、ここで確認できる)
―――
宮中の知仁の私室。
「トト、この報告を全部見てくれ」「見てる。面白いわね」
「バルバロッサの最適な開始時期は」
「多分……五月中旬。泥濘期が終わって、ソ連のフィンランドからの再編成が整う前。補給線の計算、ウクライナの農業サイクル、ソ連軍の再編成に必要な時間。三つを重ねると、五月中旬が最も効率がいい」
「ドイツが部隊を移動させ始めたら、クレムリンに独ソ戦の徴候ありと報告させるの。スターリンは却って疑心暗鬼になって軍を動かせなくなる」
(どこでも、独裁者は自分の影に脅えるか)
「分った。伝えておくよ」
―――
三ヶ月後、フィンランドは講和した。負けたが、粘った。ソ連軍の損害は、観戦武官が予測した数字の三倍に達していた。
「世界がソ連の弱さを見た。これでヒトラーが『ソ連は腐った扉だ』と思い込む」
「思い込むように、情報を少し手伝いましたね」「少しだ。後は向こうが勝手に動く」
第一部のシェープアップ版は以下で公開中
https://x.gd/akizukitikuma00




