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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第12章 世界が動く
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観戦武官報告・フィンランド講和(1940年春)

 観戦武官からの報告が、毎日届いた。


「やはりソ連軍指揮系統が硬直しています。現場の判断が全くできないようです。スターリンの粛清で有能な将校がほぼいなくなっています」


「要は『裸の王様』か。補給の方は」


「最前線まで届いていない。冬季装備も不十分です」


(ノモンハンで見えていたものが、ここで確認できる)


―――


 宮中の知仁の私室。


「トト、この報告を全部見てくれ」「見てる。面白いわね」


「バルバロッサの最適な開始時期は」


「多分……五月中旬。泥濘期が終わって、ソ連のフィンランドからの再編成が整う前。補給線の計算、ウクライナの農業サイクル、ソ連軍の再編成に必要な時間。三つを重ねると、五月中旬が最も効率がいい」


「ドイツが部隊を移動させ始めたら、クレムリンに独ソ戦の徴候ありと報告させるの。スターリンは却って疑心暗鬼になって軍を動かせなくなる」


(どこでも、独裁者は自分の影に脅えるか)


「分った。伝えておくよ」


―――


 三ヶ月後、フィンランドは講和した。負けたが、粘った。ソ連軍の損害は、観戦武官が予測した数字の三倍に達していた。


「世界がソ連の弱さを見た。これでヒトラーが『ソ連は腐った扉だ』と思い込む」


「思い込むように、情報を少し手伝いましたね」「少しだ。後は向こうが勝手に動く」

第一部のシェープアップ版は以下で公開中

https://x.gd/akizukitikuma00

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