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ポテンシャルという概念(1920年晩秋)
第一部のシェープアップ版は以下で公開中
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それから九年が過ぎた。一九二〇年、晩秋。
突然、トトが言った。
「統治とは何だと思う?」
「統治とは、ある集団の持つポテンシャルの方向を決めることよ。感情や欲望が積み重なったもの、と思って。人という種は、それを異常なまでに溜め込める。溜め込んだものは、いつか、どこかへ流れ出る」
「戦争とは、そのポテンシャルを、二つ以上の集団が武器で一気に発散させる行為。一時的には軽くなる。でも、結果としては、むしろ増える」
「増える……」
「憎しみも、恐怖も、また積み重なるから。統治者の役目は、それを、暴発させずに、ゆっくり逃がしていくこと」
「僕には、それができるのか」
「わからない。でも、一つだけ言えることがある」
トトの声が、少しだけ、いつもより真剣に聞こえた。
「知識は、最も軽い武器であるが、最も冷厳な武器でもある。戦車も、銃も持てないあなたが、唯一持てる、一番強い力。これだけは、覚えておいて」
知仁は、その言葉を、何度も心の中で繰り返した。
すぐには、飲み込めなかった。
それでも、いつか分かる日が来る、という予感だけはあった。




