↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第11章 TOTO
PR
68/75

旅順の数字(1917年冬)

第一部のシェープアップ場は以下で公開中

https://x.gd/akizukitikuma00


 一九一七年、冬。御学問所、私室。


 まだ声変わりも済んでいない知仁が、万年筆を手に取った。


「今日、学校で、日露戦争を習った。乃木大将の旅順攻略——教科書には、輝かしい勝利、としか、書いてなかった」


「教科書には、何が、書かれていなかったと思う?」


「何が、とは」


「数字よ。旅順要塞への総攻撃——あれで、日本軍が失った兵の数、聞いたことはある?」


「たくさん、とは、聞いた」


「六万を、超えるわ」


 知仁は、しばらく、黙っていた。


「六万……」


「戦死・戦傷、合わせて。要塞一つを落とすために、それだけの若者が、命を落とすか、身体を損なった」


「勝ったのに、か」


「勝ったのに、よ。正面から、堅固な要塞に、兵をぶつけ続けた。もっと時間をかけて包囲を締め上げる方法もあったはずよ。でも、選ばれたのは、正面からの、力押しだった」


「なぜだ」


「早く、結果が欲しかったから。それと——正面から力でねじ伏せる方が、格好が良かったから、というのも、あるかもしれないわね」


―――


 知仁は、しばらく、何も言わなかった。


「儂は……儂は、そんな風にはなりたくない。格好つけて、犠牲を払って、それを、勝利と呼ぶような」


「それなら、知仁は、これから、たくさん、考えていくといいわ。犠牲を払わずに、目的を果たす方法を」


「そんなことが、できるのか」


「簡単では、ないでしょうね。でも、不可能でもないと思う。急いで正面からぶつからなくても——待って、囲んで、相手が自分から動けなくなるのを、待つという道もある」


「動かない、という道か」


「そう。動かないことにも、力があるの。それを、これから、知仁は、学んでいくといいわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。