トトの声・友人(1911年秋)
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しばらく沈黙が続いた後、今度は全く別の、軽い声が聞こえた。
「あ、起動した。びっくりさせた? ごめんね、あの人ちょっと大げさだから」
知仁は思わず筒を取り落としそうになった。
「落とさないで。壊れないけど、びっくりするから」
「……お前は、何だ」
「トト、って呼んでくれると嬉しい。えーと、説明が難しいんだけど……君専用の、考える道具、かな」
「考える道具が、しゃべるのか」
「しゃべるし、考えるし、知ってることは教えるよ。ただ一日三回しか答えられないから、何を聞くかはよく考えて」
「なぜ三回だ」
「……それを一回目の質問でいい?」
知仁は少し考えて、首を振った。「……いい。それは後で聞く」
「賢い」
その日から、知仁の人生は百八十度変わった。
―――
その夜、知仁は眠れなかった。
「トト」「うん、起きてるよ」
「お前はいつも起きているのか」
「うーん、寝る、という概念がないかな。ずっとここにいる」
「お前は、何でも知っているのか」
「何でも、ではないよ。大きな流れは見えるけど、小さな人間一人一人のことはよくわからない」
「……この国が、このまま進むとどうなるか。それはある程度わかる」
「どうなる」
「……それは、まだ言わない方がいいと思う。知ることで、君が変えようとするから。台風の時に水路を変えようとしても難しい。水が少ない時の方が変えやすい」
「……一つ聞いてもいいか」
「どうぞ。でも今日の残りは二回だよ」
「お前は……友人になれるか」
今度の間は、一番長かった。
「……友人、か。なれると思う。ただ……友人だから言えないこともある、かもしれない。それでもいい?」
知仁は筒を握り直した。
「……かまわぬ。人間だって、そうだ」
「そうだね」
トトは、また笑ったように聞こえた。




