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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第10章 宴会と戦場
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噂・次の盤面(1939年秋)

第一部のシェープアップ場は以下で公開中

https://x.gd/akizukitikuma00


 竹中は麻子に言った。


「噂を流してくれ。ノモンハンでのソ連軍の敗北は、旧帝政派のサボタージュが原因だという噂だ」


「……それ、事実ですか」


「事実かどうかは関係ない。スターリンには都合のいい話だ。粛清の口実が欲しい時に、ちょうどいい敵が現れる。粛清が加速すれば、ソ連軍の指揮能力がさらに低下する」


 みほが言った。


「『日本が助けてくれた』という認識が生まれる。玉葱のようにむいてもむいても疑惑は残る、いや膨れ上がる……いかにも室長らしいですね」


「恩義を感じた相手は、自然に動く」


「……竹中室長、本当に悪魔ですね」


「竹田に言われ慣れている」


「噂は複数のルートから流せ。どこから出たかわからないように。日本が関与したという証拠を残すな」


 麻子が出て行った後、みほが言った。


「将来、旧帝政派とのコネクションが育てば……」


「ロマノフ帝国の話に繋がる。まだ先の話だ。でも種を蒔いておく」


―――


 竹田が言った。


「次はどこに向かいますか」


「ヨーロッパだ。ドイツが動く。フランスが揺れる。イギリスが苦しくなる」


「日本は」


「静かにしている。その間に、盤面が変わる」


「……竹中、お前は今、何手先を見ている」


「それが見えたら、苦労はせん」


 竹中は答えなかった。ただ窓の外を見ていた。空が、少しずつ暗くなっていた。

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