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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第10章 宴会と戦場
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日ソ平和声明とその余波(1939年秋)

第一部のシェープアップ場は以下で公開中

https://x.gd/akizukitikuma00

 停戦の翌日、外事特務課から全世界に声明が発出された。


「このノモンハン事件は決して日ソ両国が望んだものではなく、両国民の平和への願望が不幸な形で暴発した結果である」


 竹中はその声明文を見て竹田に言った。


「どう思う」


「……嘘ではないですね」


「そうだ。嘘はついていない」


「でも全部でもない」


「それが外交だ」



「ソ連はどう受け取りますか」


「複雑に受け取る。それでいい。複雑に受け取る相手は、単純には動かない」


―――


 1939年秋。声明は静かに、しかし確実に広がった。モスクワが反応し、ソ連の外交筋から非公式接触があった。


「声明の真意を確認したい」


 麻子が分析した。


「ソ連は混乱しています。日本が本当に平和を望んでいるのか、読めていない」


「読めないままでいい。接触には応じるか」


「応じる。ただし何も約束しない。『声明の通りだ』とだけ言え」


 みほが言った。


「ソ連は今、怖がっています。日本がノモンハンで止まったことが。わからない相手は怖い。だから接触してきた。『本当に終わりか』と確認したいんです」


「終わりだと言えば」


「信じない。でも……信じたい、とも思っている」


「その『信じたい』という気持ちを使う。こちらから何も仕掛けない。ただ静かにしている。相手が信じたければ、勝手に信じる」


「最も難しい戦略ですね」


「最も安いコストでもある」

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