日ソ平和声明とその余波(1939年秋)
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停戦の翌日、外事特務課から全世界に声明が発出された。
「このノモンハン事件は決して日ソ両国が望んだものではなく、両国民の平和への願望が不幸な形で暴発した結果である」
竹中はその声明文を見て竹田に言った。
「どう思う」
「……嘘ではないですね」
「そうだ。嘘はついていない」
「でも全部でもない」
「それが外交だ」
「ソ連はどう受け取りますか」
「複雑に受け取る。それでいい。複雑に受け取る相手は、単純には動かない」
―――
1939年秋。声明は静かに、しかし確実に広がった。モスクワが反応し、ソ連の外交筋から非公式接触があった。
「声明の真意を確認したい」
麻子が分析した。
「ソ連は混乱しています。日本が本当に平和を望んでいるのか、読めていない」
「読めないままでいい。接触には応じるか」
「応じる。ただし何も約束しない。『声明の通りだ』とだけ言え」
みほが言った。
「ソ連は今、怖がっています。日本がノモンハンで止まったことが。わからない相手は怖い。だから接触してきた。『本当に終わりか』と確認したいんです」
「終わりだと言えば」
「信じない。でも……信じたい、とも思っている」
「その『信じたい』という気持ちを使う。こちらから何も仕掛けない。ただ静かにしている。相手が信じたければ、勝手に信じる」
「最も難しい戦略ですね」
「最も安いコストでもある」




