疑似司令部・今村への説得(1939年4月)
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1939年4月
竹中とみほが関東軍司令部に向かった同じ頃、竹田は別の車で南岸の荒地に向かっていた。
「仮設飛行場として使えるか」
「距離は十分です。工兵に整地させれば三日で使えます」
竹田は地面を踏んだ。固かった。水はけも悪くない。
「ここに疑似司令部を建てる。本物に見えなくていい。遠くから見て、それらしければいい。テントと木造の仮設建物を組み合わせる。アンテナを立てろ。旗も必要だ」
「どの旗ですか」
「関東軍の旗だ」
「……本物の司令部と間違えさせるためですか」
「ソ連の偵察機を間違えさせるためだ。急進派の参謀連中はそこに押し込む。彼らにとっては本物の司令部のつもりでいてもらう」
―――
翌日、竹中は今村の執務室を訪ねた。
「司令官、これから進める作戦に、関わらないでいただきたい。万一失敗した時、司令官に責任が及ばないようにするためだ」
今村は窓の外を見た。
「……竹中、お前は俺を信頼しているのか、していないのか」
「信頼しているからこそ、頼んでいる。信頼できない者には、守る必要がない」
今村はしばらく竹中を見た。それから、小さく頷いた。
「わかった。『聞かない』。『見ない』。『知らない』」
「ありがとう。その言葉を一番陛下は望んでおられる」
「御言葉として理解した。ただ……部下が死んだ時は、教えてくれ。それだけは知りたい」
「約束する」




