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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第10章 宴会と戦場
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海軍首脳宴会(1939年1月)

 1939年1月上旬


 皇居の一室に、正月の飾りがあった。表向きは宮中の年始行事だった。しかし招かれた二十数名は、艦隊司令、幕僚長——海軍の中枢を担う者たちだった。全員がPL1の事前選別を経ていた。忠誠度、思想傾向、武漢停戦への反応、全てが確認済みだった。


 知仁が現れた。全員が立った。


「楽にしてくれ」


 宴が進んだ。そして知仁が静かに語り始めた。


「一つ、話を聞いてほしい。朕は、この国が対米戦争に突入することを、望んでいない」


 誰も動かなかった。


「しかし世界は動いている。地球儀を見たら日本は小さな島国だ。その小さな島国が二大強国間の中で生き残るには知恵がいる。その一つが臥薪嘗胆だ。朕は先にソ連を叩こうと思っている。その後で状況次第では対米戦にもなりうるかもしれないから、臥薪嘗胆に心がけてくれ。朕は海軍を頼りにしている」


「頼む」


 全員が頭を下げた。


 宴が終わった後、知仁は一人ひとりに御下賜品を手渡した。菓子と箸だった。派手なものではなかった。しかしその品を受け取った者は皆、同じことを感じた。


 血判状より重い。脅しより深い。


 『誇り』による拘束が、静かに始まった。

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