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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第9章 動乱の時代
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査問委員会前・河辺正三の場合(1937年12月)

 陸軍内部では盧溝橋事件で査問委員会が開かれるという噂が駆け巡っていた。しかも天帝が自らの命に反したと怒っておられるとも。


 河辺正三は居ても立っても居られない焦燥感に炙られていた。


 そんな河辺の元に、竹中が突然尋ねてきた。


「河辺さん、私はある御方筋の者です。その御方はあなたの優柔不断さに心をいためておられます。このまま座して査問会で恥を晒しますか?」


「でも証拠が……」


「あの御方が証拠を見ていないとでも。それはそれは、不敬というものですよ」


「そっ、そんな」


「査問会に出頭して末代までの恥を晒す。それを避ける方法を提案します。今ここで我々の調書にサインして、健康上での依願退役願書に署名されることです。そうなれば一族家族の名誉も保たれ、恩給も出るでしょう。猶予は10分以内です。10分過ぎたら、明日には査問会の出頭命令が出ます」


 河辺は間もなくサイン・捺印した。

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