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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第一部 兆し
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04:50(竹田登場)

ほどなく、廊下に静かな足音が聞こえた。


 須知が扉を開けると、竹田寄騎少佐が入ってきた。


 軍服は完全に整っていた。深夜早朝に呼ばれたとは思えない。


 是清はその男を一瞥した。


 若い。だが眼に妙な落ち着きがある。いままで知っている類の軍人ではない凄味があった。


 竹田は知仁の前に立ち、短く一礼した。余分な言葉はなかった。


 知仁は静かに言った。


「動いた」


「はい」


「どこまで」


「岡田邸、牧野別邸、それと……」


 竹田は一瞬だけ間を置いた。


「鈴木侍従長が負傷しております」


 知仁は目を閉じた。


 開いた時、表情は変わっていなかった。


「竹中は」


「動いています」


 それだけだった。それで十分だった。


 是清が静かに茶を一口飲んだ。


 震えてはいなかった。


 天帝は全て読み切っておられる。


 知仁は立ち上がった。


「須知」


「はい」


「宇垣に連絡を」


「既に」


 須知は静かに答えた。


 知仁はわずかに目を細めた。


 それが笑みに見えたのは、竹田だけだったかもしれない。


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