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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第一部 兆し
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4/73

20:00(前夜)

 その前夜、皇居の知仁の一室(普段は滅多に人を呼ばない私室)


 知仁は静かに座っていた。


 卓の上には須知が淹れた茶が高橋是清の前にも、まだ湯気を立てていた。


 壁際には須知が佇立している。


 是清は向かいで口を閉じたまま、ただ待っていた。長年の政治家として、この沈黙が何を意味するか、肌で分かっていた。


 知仁が口を開いた。


「是清、今夜はここに泊まってくれ」


「……理由を、お伺いしても」


 是清が、静かに尋ねた。


「朕には、時に、『先が見えること』がある」


 知仁は、静かに、しかし、はっきりと言った。


「今は、『詳しくは、聞かんでくれ』、ただ、今夜は、傍にいてほしい」


「……はい」


 是清はそれだけ言った。余計なことは聞かなかった。


 知仁は窓の外の暗闇をしばらく見つめた。


 雪が舞い始めていた。


 懐の中で、細い筒がじっと息を潜めていた。


(トト)


 声に出さず、心の中で呼んだ。


(うん)


(今夜、動く)


(わかってる)


 短い返答だった。それだけで十分だった。


 知仁は静かに幼い時からの教育係でもあり、側近の中でも一番の古株で、最も気の知れた、須知の方を見やり、


「竹田を呼べ」

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