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20:00(前夜)
その前夜、皇居の知仁の一室(普段は滅多に人を呼ばない私室)
知仁は静かに座っていた。
卓の上には須知が淹れた茶が高橋是清の前にも、まだ湯気を立てていた。
壁際には須知が佇立している。
是清は向かいで口を閉じたまま、ただ待っていた。長年の政治家として、この沈黙が何を意味するか、肌で分かっていた。
知仁が口を開いた。
「是清、今夜はここに泊まってくれ」
「……理由を、お伺いしても」
是清が、静かに尋ねた。
「朕には、時に、『先が見えること』がある」
知仁は、静かに、しかし、はっきりと言った。
「今は、『詳しくは、聞かんでくれ』、ただ、今夜は、傍にいてほしい」
「……はい」
是清はそれだけ言った。余計なことは聞かなかった。
知仁は窓の外の暗闇をしばらく見つめた。
雪が舞い始めていた。
懐の中で、細い筒がじっと息を潜めていた。
(トト)
声に出さず、心の中で呼んだ。
(うん)
(今夜、動く)
(わかってる)
短い返答だった。それだけで十分だった。
知仁は静かに幼い時からの教育係でもあり、側近の中でも一番の古株で、最も気の知れた、須知の方を見やり、
「竹田を呼べ」




