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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第8章 武漢作戦
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蠢く軍(1938年6月)

 関東軍が再び蠢き出した。それは地獄への門を開く蠢きだった。


 戦線の非拡大の通達をいつも通りに無視して、戦線の拡大を画策した。


 SSSの幹部とPL1からの報告でJCSが緊急に会議を開き、天帝の最終決断を拝承した。


 天帝が直接命じる。それが何を意味するか、家臣なら誰でもわかった。


 参謀長が静かに言った。


「……伝達する」


 知仁の命はJCSを通じて陸軍司令部から関東軍司令部に送られた。


 数日後、竹中は竹田に言った。


「次は国民だ」


「ラジオですか」


「ああ。ただし……詳細は言わない。方向だけ示す」


 赤いランプが点いた。


「朕である」


 知仁の声が、日本中に流れた。


「武漢まで戦った将兵の労苦を、朕は深く認識している」


 間があった。


「しかし朕は思う。莫大な戦費を血税として国が使うのは、本意ではない。植民地より貿易で国を育てていきたいと思う。明治維新にはなかった満州も手に入れ、好景気になっているんじゃないか。それで十分ではないか」


「朕はこれからも、この国の行く末を共に考えたい。朕を信じてくれる者は、共に歩んでくれ」


 赤いランプが消えた。


 放送室の外で、竹田が壁にもたれていた。みほが隣に立っていた。


「……上手いですね」


「何が」


「止めたとは言わない。でも止まる」


「軍人のプライドを守りながら、方向を変える」


「そうです。『血税』という言葉と『好景気』という言葉が同時に出てくる。国民は計算できる」


「竹中中佐の台本ですか」


「半分はそうだ。あとの半分は陛下ご自身の言葉だ」


 みほはそれを聞いて、少し黙った。

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