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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第7章 束の間の平安
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対戦車自走砲の開発(1938年末)

1 FN社の技術者が満州に着任して三ヶ月が過ぎた頃、麻子が珍しく興奮した様子で入ってきた。


「竹中室長、見てください」


 手に図面を持っていた。


「何だ」


「チイ改です。古い八九式の車体にエリコン37mmを載せました」


 竹中は図面を見た。オープントップだった。装甲は薄い。しかし砲は確かだった。


「FN社の連中が手伝ってくれたんですか」


「弾薬の専門家が砲の選定を。設計は工廠の人間と一緒に」


「装甲が薄いな」


「薄いですよ。でも考えてみてください、こんな短時間で戦車戦ができる車体が出来るはずないでしょう? 自走砲です。車体に砲を積んだだけ。しかも対空にも使える速射砲です。正面から打ち負かすんじゃなく、弱い所に当てて擱座を狙う兵器です」


 麻子は別の図面を広げた。


「野砲のようなものが走り回れるんですよ。10両あれば、敵の戦車一個大隊を一時間止められます。20両あれば、背後の補給線を切れます」


「数字の根拠は」


「ノモンハンの演習データと、ソ連車の行動パターンを分析しました」


 みほが言った。


「ソ連軍は現場の臨機応変さに欠けます。指揮官が止まると、部隊全体が止まる。その間にあの自走砲が後続を撃破するのです」


「古い車体はどこから調達する」


「関東軍の倉庫に使われていない八九式が相当数あります。整備すれば動きます」


「費用は」


「新造の十分の一以下です」


 竹中は頷いた。


「作れ。ただし……20両作ったら止まれ。まず使ってみてから、次を考える」


「……『質より量』じゃないんですか」


「量は後でいくらでも作れる。最初は使えるものを確かめる」

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