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辻政信・ビルマへ(1938年)
辻政信が竹中の前に座った時、竹中はしばらく辻を見た。
優秀な男だった。しかし眼が危なかった。熱があった。それ自体は悪くない。しかし向く先が問題だった。
「辻、一つ頼みたい仕事がある」
「はい」
「ビルマだ」
辻は少し驚いた顔をした。
「……ビルマですか」
「イギリスがビルマを抑えている限り、日本のインド洋への影響力は永遠にゼロだ。しかし今は英国と正面からやり合う時期ではない」
辻は黙って聞いた。
「ビルマの内側から、静かに組織を育てる。5年後、10年後の日本の選択肢を広げるための仕事だ」
「……表向きは何ですか」
「南方情勢調査のための非公式調査団だ」
辻はしばらく考えた。
「私にしかできない仕事だとおっしゃいますか」
「そうだ」
竹中は辻を真っ直ぐに見た。




