大和型設計変更(1938年春)
「だから長官にしない。海軍次官か軍令部次長に留める。その方が山本の能力が正しく使える」
「……山本中将が気づいたら、怒りませんかね」
「気づいた時には、その判断が正しかったとわかっているはずだ。怒るかもしれないが……それでいい」
ある日、麻子が海軍の設計書類を山ほど抱えてきた。
「竹中室長、大和の設計書を借りてきました」
「誰から」
「海軍省の知り合いです。非公式で」
「何がしたい」
「改善案を作りたいんです。このままでは……勿体ない」
麻子は書類を広げた。
「主砲が9門。副砲が12門。でもこの副砲、対空にも対艦にも中途半端です。速力も27ノットでは機動艦隊についていけない」
「麻子、お前は戦艦まで分析するのか」
「流体力学は船体設計にも使えます。浮力・抵抗・重量配分……全部数字の問題です」
「改善案を出してくれ」
「もう出来ています」
麻子は別の書類を広げた。
「主砲は2基6門に絞る。副砲は全廃。その分を長10cm砲の対空砲に振り向ける。レーダー管制の指揮所も設置する。バルジを大型化して水雷防御を強化する。浮いた重量で機関を強化すれば……28〜29ノットは出ます」
「世界最大の砲が減るぞ」
「世界最大の砲より、世界最強の沈みにくく使い勝手の良い艦の方が海軍には価値があります」
みほが言った。
「心理的な抑止力としても、生き残れる艦の方が長く効きますね」
竹中は頷いた。
「海軍に話を通す。但し……お前の名前は出せない」
麻子は少し間を置いた。
「……わかりました。でも竹中室長、覚えていてくださいね」
「覚えている」




