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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第7章 束の間の平安
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無線改良・麻子の名誉

 麻子が大きな書類を抱えて飛び込んできた。


「竹中室長、無線機の件です」


「何があった」


「ノモンハンの演習報告を見ていたら……日本軍の無線機、あまりにも貧弱すぎます。大きい。重い。台数が少ない。将校クラスしか持てない。しかも壊れやすく感度も悪い」


「わかっている」


「わかっているなら何とかしてください」


 竹中はしばらく麻子を見た。


「何とかしたい。具体的な改善案を出してくれ。最大ランドセル大でな」


「……私に出せるんですか」


「流体力学と統計が得意なんだろう。回路の小型化は流体力学と似た問題だ」


 麻子はしばらく黙った。


「……確かに似てますね」


「FN社の技術者も来る。一緒に考えてくれ」


 麻子は書類を抱え直した。


「やります。でも……」


「でも?」


「成果が出たら、名前を出してもらえますか。私の名前を」


 竹中はわずかに笑った。


「約束する」


 数ヶ月後、改良型の試作無線機が完成した。麻子が得意げに持ってきた。


「見てください。三分の一の重さです。信頼性も二倍以上」


 竹田が手に取った。


「……軽いな」


「これなら歩兵分隊レベルまで配備できます。OODAループが劇的に改善します」


 みほが言った。


「麻子さん、本当にすごいですね」


「当然です。私はケンブリッジの博士ですから」


 竹田が溜息をついた。


「謙虚さを学ぶ機会はなかったのか」


「これがイギリス流の淑女の作法です、お気に召しません?」

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