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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第7章 束の間の平安
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FN社・技術者招聘(1937〜1938年)

 みほが加わった頃から、SSS司令部の仕事の幅が急に広がった。


 竹中が報告書の一枚を手に取った。


「FN社の件、進んでいるか」


「はい。ベルギーのFN社からユダヤ系の技術者が三名、接触してきています。ドイツの圧力が強まっていて……逃げ場を探しているようです」


「どんな専門だ」


「銃器設計が二名。弾薬の専門家が一名です」


「身元は」


「調査済みです。全員白です」


「動機は」


「安全。それだけです」


 みほが言った。


「安全だけではないと思います」


 竹中はみほを見た。


「優秀な技術者なら仕事を続けたい、という欲求もある。ドイツの下では自由に研究できない。日本なら……という期待もあると思います」


「それを使う。安全と研究の自由を保証すれば、こちらに向かって動きます」


 竹中は頷いた。


「家族も連れてくる条件で交渉しろ。満州に居住地を用意する」


 河豚計画の話が出たのは、その翌週だった。竹田が報告を持ってきた。


「ハルビンのユダヤ人コミュニティから、非公式な打診が来ています。満州での居住地の保護と、日本国内での活動の自由を求めています」


「人数は相当多いですよ。数万人単位になる可能性があります」


 竹中は地図を見た。


「利用するためではない」


「……どういう意味ですか」


「共に生きる、というのでは駄目か。利用という発想では長続きしない」


 みほが頷いた。


「心理的にも正しい選択です。保護される側が『使われている』と感じた瞬間、関係が壊れます」


「安江と樋口に動いてもらう。彼らは本物だ」


 竹中は書類を閉じた。


「ユダヤ人のネットワークは情報・金融・科学技術、全てに繋がっている。将来的には……アメリカのユダヤ系コミュニティとの橋渡しにもなる」

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