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目利き役・始動(1936年末)
麻子がある夜、竹中に報告書を持ってきた。
「関東軍の人事データを整理しました」
「その中に一人、気になる者がいます」
「言ってくれ」
「今村勤少佐。陸大を優秀な成績で卒業していますが、作戦畑ではなく情報・教育畑に回されています。欧米の駐在武官経験があって英語も堪能。対米英の実態を肌で知っている人物です」
「なぜ主流から外れた」
「精神論より数字で話す癖があるようです。上司に好かれないタイプですね。私といっしょ!才能って怖い」
「ちょっと黙って」
竹中はしばらく報告書を見た。
「写真は」
「これです」
真っ直ぐな目だった。しかし尖っていない。静かな目だった。
「竹田」
竹田が顔を上げた。
「会いに行ってくれ。非公式で」
「どう接触します」
「飲み屋でいい。麻子が得意だろう」
麻子が溜息をついた。
(また、わたし……飲み屋の姉ちゃんじゃなく、空力の専門家よ)
「私はただ飲み屋が好きなだけです」
「それが才能だ」
(そんな才能認めて欲しくない、統計よ・統計)




