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SSS発足(1936年秋)
情報進言機関SSSが、極秘裏に発足した。
窓のない一室に集まったのは、わずか十数名。陸海軍の情報将校、外務省の専門家、帝国大学の研究者、財閥系の調査員――。
経歴こそバラバラだったが、全員に共通していることが一つだけあった。誰もが組織の「出世競争」から一歩引かされた、しかし底知れぬ有能さを秘めた者たちだということだ。
初会合の席。竹中は短く、冷徹に言い放った。
「諸君は今日から、この世に存在しない」
冗談を言っているのではない。誰も笑わなかった。
「表向きは全員、外事特務課の人間として動いてもらう。SSSという名は、この部屋の外ではいっさい口にするな。諸君の家族も、職場も、古い友人も――誰も知らない組織だ。だが、俺はここを『日本の背骨』にするつもりでいる」
竹中は窓の外の闇へ視線を向け、言葉を重ねた。
「背骨というものは、普段は外から意識されない。だが、頭も、腕も、内臓も、そのすべてを支えているのは背骨だ。君たちには、そういう役目を担ってもらいたい」
長い、重苦しい沈黙が部屋を支配した。
「――それでも、ここに集まってくれた諸君に、深く礼を言う」
竹中は静かに頭を下げた。
「頼む」
それだけだった。




