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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第4章「動き出す歯車」
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SSS発足(1936年秋)

 情報進言機関SSSが、極秘裏に発足した。


 窓のない一室に集まったのは、わずか十数名。陸海軍の情報将校、外務省の専門家、帝国大学の研究者、財閥系の調査員――。


 経歴こそバラバラだったが、全員に共通していることが一つだけあった。誰もが組織の「出世競争」から一歩引かされた、しかし底知れぬ有能さを秘めた者たちだということだ。


 初会合の席。竹中は短く、冷徹に言い放った。


「諸君は今日から、この世に存在しない」


 冗談を言っているのではない。誰も笑わなかった。


「表向きは全員、外事特務課の人間として動いてもらう。SSSという名は、この部屋の外ではいっさい口にするな。諸君の家族も、職場も、古い友人も――誰も知らない組織だ。だが、俺はここを『日本の背骨』にするつもりでいる」


 竹中は窓の外の闇へ視線を向け、言葉を重ねた。


「背骨というものは、普段は外から意識されない。だが、頭も、腕も、内臓も、そのすべてを支えているのは背骨だ。君たちには、そういう役目を担ってもらいたい」


 長い、重苦しい沈黙が部屋を支配した。


「――それでも、ここに集まってくれた諸君に、深く礼を言う」


 竹中は静かに頭を下げた。


「頼む」


 それだけだった。

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