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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第4章「動き出す歯車」
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放送設備(1936年初秋)

 NHKから技術者が三名来た。


 全員の身元は事前に外事特務課が調査済みだった。三名とも何も知らなかった。ただ「皇居内に放送設備を設置する」という仕事を受けただけだった。


 設置場所は皇居の一室。窓のない部屋だった。


 三名は黙々と作業した。竹田が横で見ていた。


 三日後、設備が完成した。技術者たちは帰り際、竹田に聞いた。


「この部屋、何に使うんですか」


「緊急放送用です」


「なるほど」


 それだけだった。


 技術者たちが去った後、竹田は部屋を見渡した。


 マイク。送信機。NHKへの専用回線。


 シンプルだった。しかし確実に機能する。


 その夜、竹中が部屋を見に来た。マイクの前に立って、しばらく黙っていた。


「感慨深いですか」


「いや。これはただの道具だ。使う時が来た時に、使えればいい」


「使う時、というのは」


「また誰かが『天命だ』と言い出す時だ」


 竹田は少し間を置いた。


「……また来ますかね」


「必ず来る」


 竹中は部屋を出た。


 廊下を歩きながら、竹田は思った。


(この男は、まだ見えていないものが見えている)


 そしてそれが、腹立たしいほど正しいのだということも。

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