↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第3章 竹中と武田(竹馬の友)
PR
19/75

卒業祝賀会・運命の出会い

 祝賀会の広間は、軍服と礼服で埋まっていた。


 皇太子臨席。士官たちは緊張と高揚の入り混じった顔で、酒を酌み交わしている。


 その喧騒の中、竹中だけが一人、あらぬ方向を見ていた。


 窓の外の海には、日本海海戦を戦い抜いた艦艇の一部が静かに遊弋している。


 だが、竹中は海を見てはいなかった。頭の中で、別の数字を弾いていた。


『兵站』だ。


 海軍における兵站の考え方が、どうしても引っかかっていた。


 知仁は、広間の喧騒を静かに見渡していた。


(トト)


(うん)


(何か気になるものはあるか)


(……あの人。窓の方にいる人。でも外の海を見てない。普通じゃない。あなたと私が探している、羅針盤に近い気がする)


 知仁は視線を静かに動かした。


 確かに窓の外に顔を向けている。だが、その目はどこか別の、遠い場所を見つめていた。周囲の誰とも違う、孤立した色を孕んだ顔だ。


(・・・会ってみる)


 竹中が侍従に声をかけられたのは、その十分後だった。


 竹中の背筋が一瞬にして凍りついた。


 別室に通された。知仁が椅子に座り、その背後に須知が影のように佇立している。


「楽にしてくれ」


「さっき、何を考えていた」


「兵站の計算です」


「祝賀会の最中に?」


「引っかかっていたので」


 知仁は少し目を細めた。


「どこが引っかかっていた」


 竹中は淀みなく答えた。具体的な数字を出し、その誤差の根拠を説明した。


 知仁は黙って聞いた。すべてを聞き終えた後も、長い沈黙が部屋を支配した。


「明日、図上演習に参加してくれないか」


「……はっ、ですが……」


「余が、直々に頼んでいる」


 竹中はもう一度、深く礼をした。


(もう、詰んでいる)


 部屋を出た後、竹中は人気のない廊下でしばらく立ち尽くしていた。


(何が起きた)


 自身の優秀な脳細胞を以てしても、その答えだけは、どうしても弾き出せなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。