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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第一部 兆し
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12/74

11:30(その後) & 16:00(中橋中尉&鎮圧完了)

 役員室に役員全員が神妙に会議テーブル前に座っていた。その前に知仁が立ち、後ろに竹田が控えている。


「改めて、集まってもらったのは他でもない」


「……」


「こういう事態になったのは朕も自分の考えを国民に知らしめていなかったのも原因と思う」


「……」


「これから、朕も出来るだけ国民に朕の考えを知らしめておく必要があると認識した。それにはこうやっていちいち放送局まで出向くのは、時間的にも警備上も無駄がある」


「殿下、それは一体……」


「そこでじゃ、皇居の一室に放送設備の部屋を準備してくれないかな。要員はうちの親衛隊の者がそちらで訓練を受ける。今時のような緊急時にこの局と連絡を取り合って、そちらに電話回線か特別回線かで送ったら、今日のような放送に朕の声を乗せられるのではないか?」


「……技術的には可能かと思いますが、器財の搬入・据え付けにはかなりの技術がいると思いますが……」


「うん、そこはそちらに任す。そちらで信用できる者を選んでその名簿をこちらで調査の後、それらの者が据え付けしてくれればいい。運用手順もこちらの者と教義決定してくれればいい。あくまでも緊急用だ。普段は邪魔はせぬ。わかってくれるか」


「はい、かしこまりました」


 都内各所、午後一時


 東京の街頭に号外が舞った。


「天帝陛下、直接ラジオにて御言葉」


「反乱部隊に投降呼びかけ」


 人々は号外を手に、顔を見合わせた。


 天帝が、ラジオで直接語りかけた。


 それだけで十分だった。


 都内反乱軍集結所、午後二時


 銃を持ったまま、将兵たちは動けなかった。


「天命」を信じていた。


 しかし天帝が「天命ではない」と言った。


 誰も、その言葉に反論できなかった。


 一人が銃を置いた。


 また一人が置いた。


 それだけだった。




16:00(中橋中尉&鎮圧完了)



 中橋中尉は最後まで動かなかった。


 しかし周囲に誰もいなくなった時、静かに銃を置いた。


 手の中に、まだあの手紙があった。


「たわけ」


 誰が書いたのか。


 今となっては、もう関係なかった。


 宇垣一成から知仁に報告が届いた。


「全部隊、投降完了」


 知仁は頷いた。


 須知が茶を淹れた。


 是清がその茶を一口飲んだ。


「一日で収まりましたな」


「うん」


 それだけだった。

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