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知識は最も重い荷物でも前に進む  作者: 秋月 筑摩
第一部 兆し
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11/77

09:00(NHKラジオ放送室)

天帝、動き出す。

午前九時


 宇垣一成の声が、日本中に流れた。


「私は天帝より拝命された臨時総理の宇垣一成だ。反乱部隊に告ぐ。これは勅命に反する行為である。直ちに原隊に復帰せよ。繰り返す。直ちに原隊に復帰せよ」


 静かな声だった。しかし重かった。


 各地の兵舎で、将兵たちがラジオの前に集まっていた。


 街の人々が立ち止まって聞いた。


 反乱軍の中でも、動揺が走った。


 しかし動かない者がいた。


「天命」を信じる者たちは、動かなかった。


 皇居、午前十時


 須知が部屋に入ってきた。


「宇垣閣下の放送の後も、まだ一部の部隊が……」


 知仁は既に立っていた。


「わかった」


 是清が静かに言った。


「陛下、本当によろしいのですか」


 知仁は是清を見た。


「是清。朕が黙っていることで、一人でも多く死ぬなら、朕が語る」


 是清は何も言えなかった。


 須知が扉を開けた。


 NHK放送室に、知仁が入ってきた。


 スタッフが固まった。誰も動けなかった。


 天帝が、ここにいる。


 知仁はマイクの前に立った。静かに、しかし真っ直ぐに。


 赤いランプが点いた。


「朕である」


 その一言で、日本中が静止した。


「朕は今、この場所から直接語りかける。これまではしなかったことだ。しかしこれほどの事態において、朕が黙っていることは朕には出来ない。それ程の事を君等はやらかせたのだ」


 間があった。


「決起した将兵に告ぐ。汝らの憂国の心、朕は受け取った。しかし朕は、汝らのその行動を認めない。朕が認めない行動は、天命ではない。朕の言葉を聞け。銃を置け。原隊に戻れ。これが朕の命である」


 また間があった。


「朕はこれからも、この国のために直接語りかける。朕を信じてくれる者は、共に歩んでくれ」


 赤いランプが消えた。


 放送室が、しばらく静寂に包まれた。

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