4話 陰謀と無手と禁忌魔法
むにゃむにゃ・・・昨日食べたご飯が久々に美味しかったせいか、いつもより深く寝てしまった気がする。そして頬に当たる柔らかい寝袋の感覚。いや、なんだかざらざらして冷たく、固い。これは・・・地面だ。
次に気付くのは、後ろ手に縛られた両手。両足も拘束されて転がされている。
「リヨス、準備はできたか」
「はい。アーロン様」
何の準備かは知らないが、絶対良からぬ準備に違いない。やられた、あれだけ常に気を抜くなと師匠にたたき込まれたのに、こんな姿を見られたらもっとしごかれる。
でも常人にはむりだ、常在戦場なんて。師匠は戦闘狂すぎる。
頭の中で挽回方法を考えていると、地面がうっすらと魔法陣の形で闇色に光り始めた。これは7属性のうちの闇の魔法の一種だろう。そしてこの怪しい状況から導き出される結論はひとつだ。
(オフィー、やばいよぉ・・・魔力を吸い出されてる)
<いや、黙ってればキミは馬鹿だねやっぱり、どうみても最初から犯罪者だったろう>
(でも遍歴者だったら野宿しててもおかしくないでしょ!)
<ま、半分はそうだけど、もう半分はどう考えても怪しいヤツの可能性があるじゃないか>
ぐうの音も出ない。でもいい人そうだったし、私は普通の悪人は専門外なんだ。
だがこうなっては何を言っても言い訳にしかならない。
そろそろ、平民の魔力なら瀕死になる量が吸い上げられる。吸い上げられた魔力は一箇所に集まっている。宝珠かなにかに、蓄積させているようだ。
「そろそろだ、止めよ」
魔道士の声で、魔法陣が止った。
「ソレはいつものところにしまっておけ」
「はい」
人を物扱いとは、この爺、なかなかに人の心がないようだ。いや、貴族はみんな似たようなものか。
リヨスが近づいてくる。
……今だ。
あらかじめ一部腐敗させておいた拘束を引きちぎり、私を見て目を見開いたエルフを掴んで、アーロンに投げつける。
「ぐわっ」
受け身は取ったようだが、壁に叩き付けられたリヨスは呻いている。ちっ、年の割に素早い動きで、アーロンは飛んできたリヨスを避けたようだ。強化魔法を自身にかけたのだろう。
この空間は地下らしく、明かりはついているが、薄暗い。禁術でも追い求めていそうな魔導士が潜んでいそうな所だ。彼らの目的が何かは知らないが、適当に街の衛兵に通報でもしておけば十分だろう。
「<<パルジー!>>」
麻痺作用の闇魔法の弾丸がとんでくる。左右に避けながら、距離を詰めていく。最後に地面に転がり、魔導士の足元に滑り込む。逆立ちで足拳を突き上げて、相手の顎を落とす。
反射的に防御魔法を展開してきたが、さりげなく弱化させて攻撃を貫通させた。
<ボクの力をこんな小賢しくちまちま使わないでくれるかい?ほんと我らが父に顔向けできないよ>
(ふん!いつものことだしあんたは気にするタイプじゃないでしょ)
アーロンがしばらく動けなさそうなのを確認し、立ち上がろうとしているリヨスに対して構える。
このまま背後を見せて逃げようとしても、彼の攻撃は脅威だ。一時的でも動けなくしてから脱出しなくては。
「ふっ、ヒューマンのただの鼻垂れ小娘かと思ったら、やるじゃないか」
「だれが鼻垂れよ!失礼ね!」
さあ、軽く第二試合といこうか。




