3話 遍歴魔導師
エルフの少年の後をついて森の中を歩いて行くと、気がつけば周りの雰囲気が変わっていた。
これは、魔法による魔物よけの結界だろう。
その中心は明るくなっていて、たき火が揺れていた。
「こんな森の中にめずらしいお客さんじゃのう、しかもこんなに可愛いらしい客人が来てくれるとは」
「おじさんがこのエルフの主?なのかな?」
たき火の隣に腰を下ろしている老魔法使いに問いかける。なんだかすごい風格を感じるし、魔法使いをまとめているような魔導士なのかもしれない。そのような人物が街の宿でなく外で野宿とは、何か訳でもあるのだろうか?
「お嬢さん、ぼーっとして大丈夫かい?お腹かが空いているだろう、共に食事としようではないか」
「・・・・・・!すいません、お腹が空いてて、ぼーっとしちゃってました」
もしかしたら、偉いさんだけど、策謀で陥れられて隠遁中なんてこともあるだろう、こんなにいい人を疑うのも良くないな、うん。心の中の疑問をごまかすようにぺこっと頭を下げて魔導士の向かいに腰を下ろす。
手伝いたいがエルフが手際よく準備を始めたので口をはさむ隙も無く、魔導士の雑談に応じていたら、ご飯が完成してしまった。まあいいだろう。エルフは神経質そうだし、料理が得意でもないわたしが下手に手を出したらにらまれそうだ。
「ふむふむ、なんと、、、宿に泊まるのを断られて野宿などなんということだ、、ここは儂がいれば安全じゃから、ゆるりと休むがよい」
「そんな、、、恐縮です」
頭を下げつつ、目の前に置かれた食事に目が行く。ごくっと唾を飲み込んだ。なんて良い匂い・・・ちゃんと調味料で味付けされていそうな良い匂いが漂ってくる。
「おっと、お互い名乗っておらなんだな、儂はアーロンという。このエルフの少年は、儂に仕えてくれておって、リヨスという」
何やら鋭い眼光で、リヨスというエルフは軽く会釈した。うっわぁ、ものすごく嫌そうな顔された気がする・・・。
そこからは、主に老魔道士のおかげで、和やかな雰囲気で食事が進んだ。リヨスは静かに兎肉と野草のスープを口に運んでいる。
「へえ、アーロンさんは引退されて、遍歴魔導士として各地を回られているんですね、次の行き先もきまっているんですか?」
騎士だったり魔法使い、その上の魔導士も、遍歴といい各地を民を助けながら修行して回ることがある。若手なら、そのまま修行の意味合いが強いが、年齢が上の場合は、引退後の慈善行為の一環とかもあったはずだ
「うむ、次は補給のために大きめの都市に寄ろうと思ってな、キャロリーブルグじゃ」
「なるほど・・・」
キャロ・・・なんて言ってたっけ?聞き覚えがあるような無いような、、
「帝国有数の魔法都市じゃよ」
察したように解説してくれた。その隣から鼻で笑うような音が聞こえた。
「ところでリーナよ、おぬし変わった体質のようじゃのう」
「わたしですか?」
かかか変わった・・・?邪悪なオフィーの存在がばれたとか?焦りながら頭を回していると、魔導士が
言葉を続けた。
「魔力の流れが詰まっておるようにみえる、それでは体に悪かろう」
「そ、そうなんですか?うーーんでも、体調が悪くなったりとかはないですよ?」
とりあえず、事実を述べる。本当のことなので、堂々と言えた。詰まっているというのは、体の外に通常はいくらか漏れ出ているはずの魔力が、体内にとどまっているところを察したのだろう。このおじいさん、なかなかにやり手なようだ。
「ふうむ、少し診てみてもいいかね?」
手招きされたので、魔導士の近くに寄る。手を取られたり、肩あたりを押されたりして、首まわりを触られた後、手が止った。
「おや、これは魔法具かね?なるほどなるほど」
「これがですか?えーっと、師匠が肌身離さず付けろって。あ、師匠というのは小さい頃に拾われてそれ以来稽古を付けてもらっていて」
もごもごしゃべっていると、勝手に情報を補って解釈したようで、なにやら納得したようにうなずいていた。
「おぬし、良い師匠を持ったようじゃのう、なによりなにより。この首飾りが魔力が溜まりすぎるのを防いでおるようじゃ。おぬしのような体質は稀に見るが、運が良かったのう」
「え、えっと、はい、シショウハイイヒトデス」
実際は溜まりすぎた魔力は別の方法で放出しているのだが、あえて言う必要は無いだろう。この首飾りは実際の所、オフィーに対する首輪のような役割だろうと推測しているのだが、余計なぼろは出す必要も無い。
「ふむ、ずいぶん時間が経ったの、幼子は寝る時間じゃ」
ほい、と寝袋を差し出された。
「これは借りてもいいんですか?」
「構わぬよ、レディーファーストじゃ」
それはあのエルフの分を借りるって事なんだろうか。私はどんなところでも寝れるからなくてもいいんだけど、好意をむげにすることもできないし、、。エルフは自然と共にあるから、一夜くらい自然のベッドでも構わないか、うんそうにちがいない。
「ありがとうございます。ではありがたくお借りします」
突き刺さるような視線を感じながら、私は寝袋に入った。意外にも気持ちよかったのか、すぐに私の意識は夢の中へと落ちていった。




