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「お前を愛するつもりはない」そう言った呪われた英雄辺境伯に、売られた令嬢は咄嗟に蝉ドンしてみた~魔王殺しの英雄と魔王令嬢の物語~  作者: 桃緑茶


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58.聖女たちの情報交換②~の前に蝉ドン~

再会の後、爺やさん達は退室しました。

聖女の談話会…と言っても、他国の王子や高位貴族も参加して話し合いなので、エヴァンス様が丁重に別室に誘導しました。意外です。

あと、敬称は最低限で良いとグリンホルン共和国第三王子――ヴィルヘルム様は仰いました。


「他国の者もいるし、皆聖女なのだからそうしようぜ」

フレンドリーなのは良いのですが、その辺りがエヴァンス様の琴線に触れて、問答無用で貞操帯を付けられたのでしょう。

ちなみに、ヴィルヘルム様の貞操帯は、サリナ様がエヴァンス様に蝉ドンして外してもらいました。


「ミ…ミンミンしますよ!?いいんですか旦那様‼人前ですよ!?ミンミンですからねっ‼」

そう言って壁際に追い込んでエヴァンス様の説得をするサリナ様は可愛かったです。

「君の可愛い姿を他の者に見られては困る」

エヴァンス様本人も護衛を兼ねて同席しているので、渋々といった感じですが承諾していました。


他国の王子の子孫断絶の要因になる行為は良くないと思うのです。

サリナ様が説得出来て良かったです。


参加者は僕、エヴァンス様、サリナ様、ヴィルヘルム様、フォクス様。

遅れてデイジーさんが書記も兼ねて参加しています。


「他の方にも声を掛けたんですけどねー。流石に王族や高位貴族が揃っていると萎縮しちゃいますから。あと、状況が状況なので混乱は大きいですよ。

あと、エヴァンス(魔王)さんが暴れて怖がったみたいで」

あ。あのクローブさんへの壁ドン…じゃなくて壁粉砕ですね。

クローブさんにも非があるとはいえ、殺戮の波動の高位貴族とお話しは…。

敬遠しますね。あの説明会の後だと余計に。

当人が居る前で、それを普通に話している新聞記者のデイジーさんは肝が据わっていると思います。


「あ、記憶球で話の内容を保存して良いですか?その方が2回目から参加者も増えると思いますよ?

…と、言うことで、ヴィルヘルムさん。さっきの敬称は最低限の下りから音声欲しいです。テイク2を下さい」

「お前…。いや、その骨の図太さ凄いな、婚約者候補に欲しいくらいだ」

「恋人がいるので却下です。それに私は思ったことやりたいことは速攻で行動に出るので、腹芸出来ませんし」

「…デイジーさんと他国の王子のやり取りを知れば、案外次から他の方の交流も増えるかもしれませんね」

フォクス様は目を輝かせて呟きました。


「予め言っておくと、俺やフォクス殿。その他数名は今回の件は周知されていた」

「そうなのですね」

「ええ。先人のやらかしが…とうとう噴火したと解釈しています」

「…しかし、とんでもないことになったな」

ヴィルヘルム第三王子が頭を抱えて言いました。


「この国で起きたことが、他国の方を巻き込んで申し訳ないです」

「本当に、何とお詫びをしてよいものか…」

「いや、アヌシュカ殿。それは無い。これは人類の問題だ。我が国も無関係ではない」

ヴィルヘルム様が僕やサリナ様のお辞儀を制して止めます。


「…我がグリンホルン共和国のやらかしを言おう。

ゼフェスゾームの山脈の魔王討伐だ。――と、言っても五百年程前だ。

魔王討伐を命じられ、勇者はゼフェスゾームの山脈に登頂せずに魔獣の渓谷を魔王の住処と誤認。

管理者である諸侯王の一人を討った。

結果、統率者を失った魔獣の渓谷はゼフェスゾーム辺境領を、山脈を迂回して襲うようになった。…申し訳ない」

その勇者による魔王討伐後も同様の事をやって、『穏健派』の魔王を倒して云ったのだそうです。


「勇者だが。その一族の最後の当主は、狂って一族を皆殺しにしたよ。

気付いたらしい。本当に倒すべき――真なる魔王を知って、あまりの強大さと己の矮小さを卑下し発狂した。

ここに留学に来たのも、その一族の子供を見つけに来た感じだな。

――使用人が咄嗟に傍系の子は逃がしたらしい」

「それは…」

「おっと、連れ戻す訳じゃない。こっちで後ろ盾が出来るように、生活に困らないよう取り計らう位はしたいだけだ。

…子供の頃、何度か遊んだんだ。無事かどうか、苦労していないか知りたかった」

ヴィルヘルム様はひらひらと手を振ってそう告げます。


「私の国はファインブルク王国の更に南東にあり、問題の封印地点からは遠く離れています。関係ない地域と言いたいところですが…。

強い魔王の目覚めで魔物たちは恐怖か、高揚か…。

魔物のスタンピードは確実に起きます。

南西は砂漠地帯ですし、魔獣が暴れ、人々が逃げるならば…脅威から遠ざかりたい心理も相まって、陸路だとバルバス二重王国でしょう。…魔獣の森を通って。

人の血肉を喰らい凶暴化した魔獣たちと戦い、一国の避難民を保護する食糧の余力はわが国にはありません。

…性質上、獣人とコボルトは好戦的なのです。理性的に動けるのは叔父上の部隊くらい。

故に、他国との国境警備をになっております。

国境警備を担う叔父様が倒れでもすれば、本能が目覚めた彼らは避難民そっちのけで戦い続け兵士は軒並み一戦で朽ち果てます。

ファインブルク王国で戦線を踏みとどまるようにせねば、我が国は滅びます」

フォクス令嬢は僕に向き合って、苦笑して言います。

「ですので、私は自国の為に戦います。…割と自分勝手な理由ですので、アヌシュカ様もサリナ様も気に病むことはありませんよ」


ふと、気付きました。

皆さん、『世界が滅ぶ』可能性は口にしません。


「アヌシュカさん。――()()()()()()()()()()()()()()()()

デイジーさんはポツリと呟きました。


「人類の取り柄は生命力です。そして()()()()()()()()()です。なので、見たい未来、叶えたい願望をドンドン語りますよ!」

デイジーさんは拳を掲げて明るく告げました。


「私の夢は…クロさんと美味しいスイーツ巡りでしょ、ユフィとキリアンさんとお付き合い記念の写真撮影に、極東の異国の文化も写真に収めて、異国のお酒を飲みながら温泉も良いですねー、あと…」

「ふふ、良いですね。私も極東には興味があるのです。我が国が崇拝する神獣様と似た神様がいるとか何とか」

「俺の国じゃあ酒は20歳にならないと飲めない法律出来てるし、留学中にダチと飲んでみたいなあ。

それと、古い栄光に縋る連中の目を覚まさせるチャンスか。ガラじゃねえけど、一聖女として叩き上げてやるか」


「わたくしも…旦那様とピクニックに行きたいですわ。…旦那様との子供と一緒に。それと…、アヌシュカ様達にもわたくしたちの領地を見て欲しいのです」

「…サリナ」


未来…。

人間とは、強いのですね。


「アヌシュカさんっ、サリナさんが領地を見て欲しいのですって‼

その時は私も同行させてくださいね‼ご夫妻の自然な仲睦まじい姿を写真に収めますよ‼」

デイジーさんの力強いお言葉に、思わず頷いていました。

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