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「お前を愛するつもりはない」そう言った呪われた英雄辺境伯に、売られた令嬢は咄嗟に蝉ドンしてみた~魔王殺しの英雄と魔王令嬢の物語~  作者: 桃緑茶


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48.ベアトリスの謝罪と便所の精霊

次の日、僕は旦那様の腕枕で寝ていました。

状況が分かりません。

「?」

「奥様、御目覚めですか?…目が腫れているので、冷やしましょうね」

「アヌシュカ、起きたか、…少しは眠れたか?」

僕はあれからも時々泣いてしまったようです。

旦那様が付きっきりで僕の背中をさすったり、涙を拭ったりしていたそうです。


「すみません、旦那様」

「気にしなくていい。こういう時位は君を支えさせて欲しい」

「旦那様、子爵令嬢が奥様を招待しているお茶会は…どうしましょうか…?」

カレンの問いに、旦那様はしばらく思案しています。

「アヌシュカ。バルバス二重王国は神獣エレシュカを信仰しているという。おそらく…」

「母の事かと…」

「耳も尻尾も治っていないし、その話題になって君の感情がコントロール出来なくなる可能性はあるな。今も目が腫れているし、無理はしない方が良い。

子爵令嬢には申し訳ないが、体調不良で欠席としておこう」

「聖女候補の説明会までには、お会いできるように体調を整えて置くとお伝えしましょうか」

母の事を神様として信仰されていることに、今の僕の涙腺は耐えられないかもしれません。

母の行いは『穏健派』として間違っていないことは分かっているのです。分かっているのですが、感情が付いていけません。

確か、まだ揃っていない聖女候補が来るそうなので、甘えさせてもらいます。


シルヴィナ様の来訪があり、あの後邪視の魔女に懐疑的な人たちを、魔女狩りの被害者の追体験をさせて黙らせたと聞きました。



――君の大切な人を助けるために、戦い、或いは身体を売って、目的地に着いた。

そこではみんなが君の大切な人を公衆の面前で拷問し甚振り、罵倒しているね。

…君には彼らを殺せる魔法がある。‥‥‥どうする?



『力を暴走させない自信がありません‥‥‥』

『魔女狩り執行者が祖父である、ローレル司教様を邪視で殺さなかった。…末代まで復讐をしないだけ、魔女ベアトリス殿にむしろ感謝すべきかと…』


そういった言質を取ったそうです。

「私たち魔王でもベアトリスの件は不問。能力の危険性はあるから定期的に監視。

とはいえ、人間の法には当て嵌めにくいからねぇ。時代が時代だし。

追体験した連中からは、セレイムの惨劇は邪視の魔女ベアトリスが正常な状態ではない魔力暴走だと云った意見も多いね」

その意見を絞り出す前に、吐しゃ物の処理が大変だったそうです。

「全員に桶を配っておくべきだった」

「それで、全員寝込ませたんですか、悪魔ですか」

「魔王だもの。…しかしアレ、いいね。夫や恋人が月経や妊娠の苦労を知らずに悩むご婦人や令嬢に売れそうだ。

過去の苦痛の追体験だとざっと説明した時、食いついた令嬢もいたし」

「それは…!…どうなのだろう?」

「出産の痛みは鼻から西瓜を出す痛みとか…、母は、刃物でお腹の中を掻き回されているような痛みと言っていました」

「そうなのか。私はエヴァンスを産んだ時は内臓や子宮を雑巾絞りされたような痛みで、ヒルベルテの時はそれこそ刃物でお腹の中を掻き回されているような痛みだったね。

…ああ、国王は『そんなもの女なら誰でも通る道だ』とのたまっていたか」

王妃殿下用に作っておこうと呟くシルヴィナ女侯爵はちょっと怖いです。

「うちの旦那はオロオロしながら気遣っていたがねぇ。そういう奴はいるんだよ」

「…そういう価値観の者には在っても良いかもしれないな」


「まあ、肝心の呪いは解呪出来ないが」


シルヴィナ様は国に蔓延る呪いを解くヒントをベアトリス様から聞きたかったそうです。

「予想はしていたが…無意識下での呪いとは…。掛けたベアトリスにもアレは解けないね」

神様本人にベアトリス様は呪いを掛けたそうです。

神が選定した聖女や聖人の死の宣言。

ですが、本人も掛けた自覚が無いものなので、呪いが独り歩きしているどうしようもないものだそうです。

「ここ百年程、真の聖女や教皇を選出出来ない理由がそれ。まあ仕方ないね。

幸い、神の遣いである精霊の加護は問題ない」

「呼び名を変えた方が良いのでは?魔王の件と言い紛らわしい」

「んー、いいだろ、そのままで。その方が過去のやらかしを忘れないだろうに。

…過去を悔いて、呪いが薄まるのを待つしかない」

ふと、ノックが聞こえました。

「あのー…旦那様…シルヴィナ様…‥‥ベアトリス様たちが、先日のお詫びに来ているのですが‥‥‥」


+++++


つい先日、殺意むき出しで現れた邪視の魔女だ。

護衛騎士として追い払うべきなのだろう。が――

クマのぬいぐるみで顔を隠し、護衛のキリアン殿に誘導されつつ、聖女候補のユーフェミア様とデイジー様の後ろに居る魔女にどう対応したものか。


「その、辺境伯夫人に。夫人に直接関りが無い過去の事で辛い思いをさせた事をお詫びに来ました」

「何故、ベアトリス…殿は。ぬいぐるみで顔を隠しているのですか?」

デイジー様の言葉に、一番不可解な事を尋ねた。

「能力や昨日のやらかしで、顔を隠して居た方が良いだろうと判断したそうです」

「…ベアトリス殿…、そうなのですか?」

「‥‥‥アヌシュカ…辺境伯夫人は、その。私を怖がるかもしれないので‥‥‥」


これが、邪視の魔女ベアトリスなのか?

魔女が、魔女狩りの遺族の為、神に誓って虚偽を述べない旨を宣言した事も驚いた。

主からベアトリスの虐殺に至った経緯は聞いた。その理由も大切な人を助ける為。

その上で、魔女自体は危険であり、ベアトリスの見たものを殺す邪視の能力も楽観視出来る代物ではないと主は念を押したが。

「謝罪の文を夫人に渡してもらえないだろうか…」


相変わらずクマのぬいぐるみで顔を隠して話すベアトリスに、主が現れその奇行に驚きつつも謝罪を受け入れると告げた。

「良いのですか?」

「魔女ベアトリス殿に限っては、先日魔女狩り執行人の直系の血族の司教様相手に、殺意を自身で抑えた。…理性ある方だ。

それに、中にバーンベルク女侯爵もいる。問題ない。が‥‥‥

そのぬいぐるみは?」

すると、キリアン殿が申し訳なさそうに告げた。

「そのー、アヌシュカ夫人のご先祖の因縁を話したことを、ベルは後悔していまして。

邪視の能力上、怖がらせないかずっと悩んでいたので、ぬいぐるみで顔を隠してみたらと…冗談を言ったら本気でやりました」

「だから、ベアルはその辺融通が利かないって言ったのに」

「いいの、ユフィ。…私は目つきがきついし、怖い眼を向けるより、可愛いぬいぐるみを見た方が…あの子…アヌシュカも泣かないかと思ったの」


ベアトリスは、魔女の一人と知っていても、本当に恐ろしいものなのだろうか?

そんな感情を抱いた。


+++++


あの後、僕はベアトリス様からの謝罪を受け入れることにしました。

あと、ぬいぐるみで顔を隠さないで良いとも。

「‥‥‥酷い顔をさせてしまった。すまない」

やっとお顔を見せてくれたベアトリス様もお目目が真っ赤です。


「本当に……ありがとう。アヌシュカ……辺境伯夫人」

「あの、その……呼びにくければアヌシュカで構いません」

「いいのか?貴族としては、辺境伯夫人と呼ぶべきでしょう」

「お気になさらず、呼びやすいようにしてください」

「…ありがとう。アヌシュカ」

ベアトリス様はぬいぐるみをくれました。

フワフワしていて可愛いです。

「お目目が星空見たいです」

「その…あなたの瞳は黒くて、夜空のようだから…」


僕の瞳は黒いと言われますが、父譲りの瞳です。髪は母の銀色の猫毛です。

「アヌシュカの瞳は黒っぽくても、よく見れば深い群青色なのにね」

「ありがとうございます」

ベアトリス様の瞳は綺麗な金色で羨ましいです。

「良かった」

不意にベアトリス様がそう言いました。

「あんまり笑わない子かと心配していたけれど、ちゃんと笑えているから」

「?そうなのですか?辺境領に来てからは結構楽しくしていますよ?」

「‥‥‥。リッツ領では貴女の良くない噂を広められたそうね。一応気を付けておいて。

元リッツ伯爵令嬢が聖女候補としてここに来ている」

「…何ですって?」

旦那様がその言葉に反応しました。


「リッツ領は多額の負債を抱え、彼女は別の伯爵家に嫁いだ。姓が変わったから気付かなったのだろう。

ただ、一般的な…貴族の夫人や令嬢には招かれない。

現シャルロット・フェカーリエン伯爵夫人は…便所の精霊の加護を持つ聖女だから」

その言葉に、皆さんが凍りつきました。

お茶の時間にすることではなかったかと、ベアトリス様は言葉を濁します。


「今は‥‥‥加護を与えて肥料づくりで財を成しているわね。

ウンフェンコ・フェカーリエン伯爵も曲者でね、…興味があるならシルヴィナが知っている」

「ちなみに、フェカーリエン伯爵を勧めたのは私だよ。

…幾ら巨万の富を持っていても、綺麗なドレスを着ていても…暴力便所夫人をお茶会に招くかい?」

「お前、本当に性悪だわ」

「アヌシュカには恩義がある。なので、上げて落としただけさ」

シルヴィナ様の発言にベアトリス様の目つきが厳しくなりました。が、すぐに僕を見て柔らかくなります。

「私やシルヴィナのような性悪にならないようにね、アヌシュカ」

ベアトリス様はそう言って帰っていかれました。


「まさかリッツ元伯爵令嬢が聖女候補とは思いませんでした……」

「便所の精霊の加護か…君を平民女と罵るような、気位の高いわがままな令嬢には耐えられんだろうな」

お茶を飲みながら旦那様達と話します。


「普通に落ちぶれるよりキッツイですね…」

カレンは青ざめています。無理もありません。

「‥‥‥ウンフェンコ・フェカーリエン伯爵はどんな御方なのですか?」

「元リッツ伯爵令嬢の性格を知っていたのだろうな。その点に関してはドンピシャだ。まぁ、それ以外にもフェカーリエン伯爵は、便所の聖女を使いこなせるからね」


シルヴィナ様はケラケラと笑っています。

「彼、物凄いマゾなのさ。男爵令嬢の骨を折るほど暴力的な現シャルロット伯爵夫人の暴力なんぞ、彼にはそよ風みたいなものさ」

「妻に何てこと聞かせるんですか」


「フェカーリエン伯爵はね、私に踏まれたいと直訴して来たよ。

私の肖像画が彼の屋敷に…3つあったね、私の知る限りで。

だから、伯爵夫人が在宅なのを見計らって、踏んでいるよ?商談の合間にね。

私も夫がいるから、護衛騎士の前で踏むのだけど、それも興奮するらしい。

ま、夫人には屈辱だろう。伯爵、物凄く恍惚の表情で踏まれている実況するし。

…アヌシュカに暴行した件では私も少し怒っているし、あの娘にちょっとした仕返しはしておこうかと思った」


シルヴィナ様がお話をしているみたいですが、旦那様に耳をふさがれ、カレンに目を隠されたので良く聞こえませんでした。


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