27.魔王の不始末は魔王の仕事
領内に所々発生している瘴気の原因探しで、まずダリアのお母さん――カンナさんのおうちに行きました。
「これは、領主様の奥様ともあろう御方が、すみませんねぇ……」
「いえ、僕の出来る事でしたら、お力になりたいのです」
ダリアを白髪にしたような小柄なおばあさまです。
やっぱりです。
寒い地域なので、お家の窓を閉め切ってしまうので瘴気が家の中で澱んでいます。
カンナさんの瘴気を取り除いた後に、お願いをしました。
「寒いと思いますが、一時間に2回。紅茶が淹れ頃になる短い時間は窓を開けてゼフェスゾームの山脈の清浄な空気を入れて、瘴気を外に出してくださいね」
呼吸は安定しました。ただ。お歳なので、魔障を引き抜いても持病があると悪くなります。
当分は治療を続けた方が良いでしょう。
「奥様、ありがとうございます…‼」
「持病と混ざって悪くなっていました。僕も時々様子を見ますが、教会でも診てもらった方が良いです。お母様は信心深い方なので、その方が良いです。
……もっと、弱った身体の人でも、魔障を排出できるようにした方が良いですね」
定期的な治療をしてこれだと、教会が瘴気の温床になっています。
「とりあえず、教会に行ってみましょう。皆さんが魔障などで頼るのは教会です」
「…やはり、奥様が聖女では?」
「?でも、教会の人のやり方もありますよね。
…うーん。教会のやり方に沿った治療法も探して提案してみましょうか」
今日は魔障の吹き溜まりの原因を調査です。
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教会のあまりの状況に呆然です。
まず、教会は魔障の患者さんにてんてこ舞いで、掃除が行き届いていません。
これ、呪いが好む環境になっていますし、寝具も不衛生です。魔障が溜まりやすいです。
信仰心と一緒に神様の加護も強まるのですが…。
神官さんたちの神力は、主治医のハンスさんよりちょっと強いくらいです。
…もう少し強くても良いくらいです。信仰心に比例していません。
神様が協力したくなくなるような事が、あったのでしょうか?
何でも、先々代の司教が良くない人で、民間で出来る魔障の対処法やら廃棄したそうです。あと、ケチって施設の管理人を辞めさせて、備品の管理が分からない。
魔王の出現で緊急事態が続いて更に清掃が行き届かないと。
更に、如何にか教会を立て直そうとしたおじいさん司教様が、魔障治療の過労で倒れたと。
見学のつもりでしたが、辞めます。目についた箒とちりとりを掴みました。
「……神は不浄を嫌うと聞きます。この教会のお部屋をまず清めましょう」
神官さんのお話の途中ですが、行動に出ましょう。
僕がスカートをたくし上げて、使っていないお部屋の汚れた床やらガッシガッシ掃除しだして、護衛騎士のディルやダリアやカレン、神官さんたちが驚いていました。
「お部屋を神様が好むくらいに清潔になったら、患者さんをここに休ませて欲しいです‼」
神官さんたちの信仰心は強いので、神様の為に綺麗にしようと伝えると協力してくれました。
兎に角お掃除で澱んだ瘴気を消してしまいましょう。
皆でお掃除とお洗濯頑張りました。
神官さんは僕が浄化魔法の祝福を持っていることを伝えると、教会の一室で休む司教様に会わせてくれました。
お歳や過労、多くの魔障の治療で、積もり積もった魔障の残滓が司教様を蝕んでいます。
魔障を引っこ抜くと、眠る顔色は良くなりましたが、テーブルに溜まった書類を見るに、また倒れます。
「……職権乱用になりますか?」
「奥様は我々の神力ではどうにもならない、司教様のお身体を治療して下さった恩人です。責任は我々が持ちます」
「わかりました。お隣のお部屋をお借りします。あと、神官さんもお一人。
司教様が判断されるものを確認する方が必要です」
取り敢えず、神官さんに司教様が確認しないといけない資料と管理人用のものを分別。
リッツ領で執事さんのお手伝いをしていたので、書類はちょっと得意です。
ダリアに前任の管理人さん――は、お亡くなりになっていましたので、僕の社交等の維持費?そこからお金を報酬で出してギルドに介入してもらって、管理人さんや臨時のお掃除や洗濯担当の人員を雇う依頼を出しました。
魔王討伐の爪痕は思ったより強いので、必要な人員を確保です。
「奥様、維持費は……」
「余っていますので使ってください」
辺境伯夫人パワーです。僕は権威を振りかざします。
こういう生きる糧は、人が成すことです。
でも、力が足りないなら他で補うべきです。
辺境伯夫人パワーで人が日常を取り戻せるなら、それが良いです。
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「―― 魔障の対処法の本は悪い人に燃やされましたが、一応辺境伯の図書館も確認してみましょう。昔の神官さんの編み出した方法があるなら、その方が神官さんたちも受け入れやすいと思います」
「奥様、お疲れ様です。今日はもうゆっくり休みましょうね。……魔障を浄化…食べてしまわれていますが、軽食でしたら大丈夫でしょうか?」
ダリアは僕が今日、ほぼ何も食べていないのが気になるみたいです。
「えっと。大丈夫です」
「わかりました。料理長には、手抜きの軽食を用意してもらいましょう。……料理の愛は控えめに」
「料理長さんが泣いちゃいますね…」
「私も、お疲れの奥様に淹れるお茶を手抜きしないといけないのは、モヤッとしますわ」
「うう…」
「その分、お風呂ではピカピカに磨き上げますからねッ」
カレンたちにお風呂でマッサージされて磨かれるので、僕の肌は今ではプルプルで艶が出ています。…光ったりしませんよね?
僕がもっと成長すれば、料理長さんの愛情たっぷりのお料理を沢山食べられます。
シフォンケーキやチーズケーキを丸ごと一個食べてみたいと思う僕は、ちょっと我儘ですね。




