18.蝉ドンされた花婿の見た夢
初夜の日。
何故か気絶したオルトスは、二つの夢を見た。
一つはヒルベルテと第二王女の結婚式に、アヌシュカと参列している夢。
…叶うはずのない光景。
ブーケトスで何故か己に放り投げられるブーケ。
受け取ったブーケを嫁に渡せとヤジを飛ばす主役の筈の新郎新婦。
『オルトスにもっと幸せにしてもらえよ‼夫人‼』
『困ったことがあったら、何時でも愚痴を聞きますよアヌシュカ様‼』
祝福の花吹雪を、何故か友人夫妻に浴びせる新郎新婦。
――幸せな夢だった。
もう一つは、『愛することは無い』と告げたあの場面。
自分自身とアヌシュカを客観的に眺めていた。
第三者はオルトス自身と、――ヒルベルテが居た。
ヒルベルテは己が妻となる令嬢を拒絶する姿を見て。――無表情のまま泣いていた。
ボロボロと泣く友人の姿も、アヌシュカたちも掻き消えて、その場は暗闇と静寂が残った。
初めて見る友人の顔だった。
『自領を固めたいなら。守りたいなら、地盤を整えるのに嫁さんを貰え。嫁さんが自領を愛せるように、信頼関係を作っていけよ。
子供が居るに越したことは無いが、もしもの時は夫婦でちゃんと相談して養子を迎えるのもいいな。…エルルとの子は可愛いだろうけど、エルルが迎える養子もめちゃんこ可愛いだろうし‼』
『最悪、独身で良いなら後継者をキッチリ指名して教育しておけ。そして辺境領を護ればいい。
良い治世をお前の代で終わりにするな。自領の安寧を次へ繋げろ。
俺もエルルが愛する国が俺たちの代以降、滅茶苦茶になるのはすっげー嫌だし』
――思い出すと辛くて息が出来なくなるので、忘れようとした。
最後までオルトスを、その国を愛する婚約者の幸福を願う友なのだ。
いつも笑顔を絶やさぬ友人だった。
真逆の行動を取って、不安にさせてしまった。悲しませてしまった。




