16.やかましい友人は塵となり沈黙する
その友人はもういない。魔王討伐の戦いで、塵になって死んだ。
魔王の出現に介して、辺境領と侯爵領の騎士団合同で討伐することになった。
前線でオルトスらベルンシュタインの騎士団が魔王の進行を食い止めた。
後方のバーンベルク侯爵領の騎士団は比較的安全――の筈だった。
魔王の呪いの痛み。その波が治まった頃合いだった。
シルヴィナ・バーンベルク女侯爵はオルトスへ息子ヒルベルテの死を告げた。
(うそだ……)
『オルトス!エルルに俺の色のドレスをあつらえたいんだけどさッ‼赤だとエルルの魅力を引き立て過ぎだし、金だと清楚で愛らしいエルルに派手かな!?』
『俺に聞くなよ…、その、ワンポイントで…装飾品をあしらえば…どうだ?』
『オルトスにしてはいいアイデアだな‼ちょっとデザイナーとその辺詰めて相談するわ‼あと俺の色を合わせてオレンジも可愛いよな!?』
ヒルベルテは魔王の配下の攻撃を喰らい、塵となって遺体も残らなかったと説明を受けた。
(悪い冗談はやめてくれ、ヒルベルテ。俺をワザと怒らせて、元気づけたいんだろう?)
あのウザいマシンガントークは何処に行った。
『どーよ!?エルルから耳飾り貰った‼いいだろ!?』
『いつもお前が付けている、黒い十字架の耳飾りにしか見えん』
『ちげーよ!?エルルの瞳の色の宝石が付いてんの‼俺が諜報活動しやすいように普段使いの装いなの‼もーこれは家宝にする!一生外さないもんねっ』
「あの子の身体は消滅し、遺品はこれしか残らなかった」
(……‼)
何度も自慢され、見慣れたそれを間違えるものか。
『お前、マジで女っ気ないなぁ。俺様が未来の嫁さんが見つかるように、願いを込めたタッセルを進呈してやろう』
『…魔王討伐の前に恋沙汰をほのめかすのは不吉なフラグじゃないか?』
『ギャハハハッ‼婚約者の『こ』の字でも見つけて言えよな‼』
(ヒルベルテ、俺は十分驚いた。だから、出てこい。お前は愛情深い男だ。
――お前が…愛する女性から贈られた耳飾りを……、誰かに…預ける訳が、無いだろう……)
留め具の壊れた、小さなペリドットがあしらわれた十字架の耳飾り。
オルトスがそれに触れ、涙をとめどなく流しても。
やかましい友人は、その小さな小箱の中で無機質に沈黙していた。




