13.ポタージュスープと母のドロドロ
お昼、身体に負担が無いようにと食事にパン粥とスープを頂きました。
パン粥はクリーミィ?です。水でふやかしただけではこうはなりません。
カレンの話だとミルクを入れているそうです。酸っぱくないので料理長は凄いです。
あと、前よりも料理長の愛情や熱意・真心の感情の味が増しています。
リッツ領に居た頃は、領に際限無く湧き上がる悪意が主食でした。
伯爵家に向かってビュンビュン降って来るので。
あれは領民の不満とかです。
放って置くと良くないのですが、伯爵は聞いてくれませんでした。
まあ、そう選択するのなら、仕方ないですね。
取り敢えず、料理長のごはんが優先です。待っていたスープです。
……。
スープに…具が……無い………です………。
「料理長の料理は美味しいです。…具のあるスープが欲しいと思った僕は…随分と我が儘でしょうか……」
「そんなことありませんよ‼奥様は長旅の疲れでお身体が弱っていますので、負担の無い食事から始めましょうッ」
疲れ…。魔障痕を吸いだした後、眠ってしまいましたけど…。
スープの具は……料理長が丁寧に潰して消化が良いようにしたそうです…。
食べるとお野菜の甘味と…。はい、料理長の優しさの味がします…。
この優しさの前で…我が儘は…ダメですね……。
「…おなかがびっくりしなくなったら、少しずつ品数を増やしますからねっ。
ふわふわトロトロのオムレツを明日は食べましょう?
疲れが取れたら皮がパリパリでじゅわっとしたブルストも食べれますし、具が沢山のスープも食べましょうねっ」
僕が落ち込んでいたからか、カレンがフォローしてくれます。
トロトロ…パリパリ…。あまり想像できません。
「母のドロドロは分かるのですが…」
「ドロドロ…。奥様のお好きなお料理でしたね。どんなお料理なのか覚えていますか?」
「父の病気が悪くなって台所に立てなくなったので、母が作ったのです」
――…。
『何故鍋が噴火するのじゃ!?ああ!?焦げるでない‼』
『何故しょっぱいのだ‼分からぬ!?アヌシュカ喰うでない‼失敗じゃ吐け‼』
父がいつも作るスープを作ろうとして失敗していました。
お隣さんが母の失敗したスープを一緒にリメイク?して何とかドロドロになりました。
『アレンや…?師匠(お隣さん)が一応食べられると言ったがな…。不味かったら吐くのだぞ…?』
『そんなことしないよ。…うん、美味しい。優しい味がするよ、エレシュカ』
『本当か!?こ…今度は見目も良くするからなッ‼』
最初はしょっぱかったですけど、母は有言実行で見目の良いドロドロを作っていましたね。
「――母のドロドロだけだと僕がお腹すくだろうって、お隣さんはよくパンや水餃子とかをくれました。平べったくて綺麗な模様のパンです。かまどにペタペタ貼り付けて焼いていました。こっちでは見ないですね」
僕がリッツ領に連れていかれる時に、村の人たちは止めてくれました。
剣を向けて村の人たちを脅すので伯爵に付いて行きましたが、無事でしょうか?
そういえば、カレンはどうしたのでしょう。湯浴みの時から凄く涙もろくなっています。
ハンカチでカレンの目元を拭うと、もっと泣かれてしまいました。
アヌシュカの状態諸々を見極めた使用人たち
『…奥様のお身体見たわね?背中や腕に古い傷跡が沢山…。古傷に良い薬湯を用意しましょう』
『御髪の手入れの時に頭にも深い傷があったわ…。香りのよい軟膏も手配しましょう』
『奥様の酷い噂まで‼こちらが冤罪の悪評に塗れた令嬢令息を、何人見たと思っているの!?駆け込み辺境領を舐めないで欲しいわ‼』
『具のあるスープを食べるのが贅沢だなんて…奥様の落ち込みようったら無いわ。お身体の調子が戻るまで他の事で気持ちを解して差し上げましょう‼』
『禿げろリッツ伯爵‼』
『今の奥様だと、旦那様に言われるがまま受け入れてしまうわ。私たちでお守りしますよ‼』
ゼフェスゾーム辺境伯領の使用人たちの結束は固かった。




