いったいここは、何なのでしょうね?
襲われて以降、王子様の護衛はしばらく増員されていました。
トラウマを刻まれるような目に遭ったのですから当然ですね。学園の中だからと遠慮していたのを止めたようです。
戦闘能力第一主義の貴族の学校ですもの。
王子様よりも強い娘はそれなりにいたのです。
護衛の騎士様とセットで倒せるほどの猛者はさすがにいなかったようですけれどね。ですが、一時的にでも騎士様を無力化するまでは届いたようです。
怖い話ですね。
「では、手を繋いで歩きましょう」
「すまない。私が至らぬばかりに」
「お互い、これから長い時を隣で歩いていくのです。それも人生ではありませんか」
王子様本人には、ゲームの知識がまったく役に立たない状態です。
対外的な部分、公爵令嬢などはどうとでもなりましたが、女性恐怖症の対応など、ゲームではありませんでしたからね。
私は私で、できることをするだけなのですよ。
今は女性が怖くないと認識していただくために、私と手を繋いでの散歩をしております。
他には、大人しいと定評がある幼い娘と触れ合っていただくのと、老齢の貴婦人と歓談していただく様にしています。
心のケアなど専門外ですが、焦らずにお付き合いをするだけです。
一般的な男女の関係ではありませんが、これはもう、仕方の無い事です。
王子様と婚約したのですから、一般常識が通用しないのは受け入れねばなりません。
その“王子様との婚約関係”としても異常なのですが、喚いたところで改善するはずもありませんからね。理想と現実が乖離しているなら、現実を理想に近付けるだけなのです。
しかし……。この世界は乙女ゲームの設定と同じところが多いのですが、細部は全く違うのですよね。
ヒロイン多数に始まり、騎士様のナイスセーブなど。違いが目立ちます。
そうかと思えば、婚約後はイベント消化が出来ました。公爵令嬢との決闘イベントはゲームのままです。
現実とゲームは違うと言えばそれまでなのですが、どうにも腑に落ちないのです。
未来予知?
神の手?
私が色々と識っているのは転生ボーナスなのかもしれませんね。
ただ、複数の転生者が関わったために――あ。
学校に入学できたヒロインは8人ですが、それ以前に別の転生者が居たのかも知れませんね。
私の知らないところでその方に何かあって、今があるのかも。
少し調べてみましょう。
すでにゲームシナリオは崩壊していますが、それがどの様なエンディングに辿り着くのか。
人生の先など分からないのが普通ですが、「知っていた筈の情報が無価値になる」のは、中々に怖いものがあります。
だからと言って、シナリオに固執してもいけません。
「そうすれば幸せになる」選択肢など、どこにも有り得ないのですから。
願わくば、少しでもより良い未来がありますように。
そんな未来を掴み取る力が私の内にありますように。




