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愛のカタチ  作者: 夕崎まほろ
<IFル-ト>
40/56

後悔(sideジェイソン)

 顔を覆って嗚咽するエヴァンを見下ろして、やれやれと腕を組む。

(本当に、()()()()関係だったんだな……)

 クリストハルトのせいで友人ができなかったと聞いて、自分がどんな顔をしたのか、きっとこいつは分かっていないんだろう。

 一瞬、見たこともないくらいに幸福そうな顔で微笑んだエヴァンに、学生時代からの疑念が確信に変わった瞬間だった。間違いなくこの反応は()だ。

(それなのに、置いていったのかよ……)

 学生時代にひどい嫌がらせを受けていたときと同じくらいか、それ以上に痩せてしまったエヴァンを見て、嘆息する。これでもまだ、ましになったほうなのだ。

 クリストハルトの葬儀の直後は、本当にぼろぼろの状態だった。話しかけても上の空で、ろくに食事も睡眠もとらない。自分が悲しんでいる場合ではないとアイリスもジェイソンも青ざめたくらいだ。

『とにかく、一人でいる時間を極力減らさせないといけませんわ。わたくしはなるべくエヴァンにいさまとお茶会を開くようにしますから、お兄さまも暇な時でいいので付き合ってくださいませ』

 そう言って葬儀の翌日にエヴァンの好きな菓子を用意してノ-ランド家の屋敷に突撃した妹は、控えめに見えてなかなか行動力がある。昔は泣くだけだったのが、成長したよなあと感心したのは記憶に新しい。それだけエヴァンの状態がまずかったのもあろうが。

 そこまで惚れさせておいて自分はあっさり死んだクリストハルトは最低だと思う。できることなら襟首引っ掴んで天国だか地獄だかから連れ戻してやりたいくらいだ。

(連れ戻したら一発殴るのは確定だな)

 密かに決意したジェイソンの目の前で、ようやく嗚咽を収めたエヴァンがぐしぐしと服の袖で涙を拭っているのを見て、慌ててハンカチを出してやった。

 とりあえず、泣けるくらいには回復してきたと見ていいだろう、と心の中で安堵の息を吐く。人形みたいな顔で一日中ぼうっとしているのが一番まずいのだ。

 エヴァンが泣いていたと言ったら、たぶんアイリスもほっとするだろう。伝えてやらないといけないな、と思ったところで、ジェイソンはふと気がついたことがあった。


(……俺の妹って、失恋のしかたがちょっと可哀想だな)


 まさか惚れた男が、幼馴染の男と恋仲になっていたとは夢にも思わないだろう。


 好きな菓子でも買って帰ってやろうと考えたジェイソンは、妹がとうにそれを知っていた上に、そのことを逆手にとってクリストハルトと結婚しようとしていたことを、永遠に知ることはない。


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