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愛のカタチ  作者: 夕崎まほろ
<IFル-ト>
39/56

後悔

(前回読んでいない方へ)

前回のあらすじ:

明け方、エヴァンはクリストハルトの死の場面を夢に見る。クリストハルトの死に思いを巡らせ、彼の死から半年以上が経ってもなお癒されない喪失の痛みに耐えるエヴァンを描いた一幕。


今回の話と繋がっているわけではいので、ざっくりとだけ説明させていただきました。

 とぽとぽと、お茶を注ぐ柔らかな音にふと顔を上げれば、久方ぶりに会う友人が、心配そうにこちらを見つめていた。

「顔色が良くないな。……ちゃんと寝てるか?食べてるか?よく寝て食べないと、お前まであの世行きだぞ」

『……顔色が良くないな。また痩せたんじゃないか?食事はちゃんと摂らないと』

 遠い昔、よく似た言葉をクリストハルトに言われたことを思い出して、知らず、顔が歪む。

「ありがとう。……気をつけるよ」

 あの頃ははねつけてしまった優しさを、微笑んで受け取ることができているだろうか。

 きっと、まだできていないのだろうな、と思う。その証拠に、ジェイソンが苦しげに眉を寄せて、エヴァンを見下ろしていた。


 クリストハルトも、こんな顔をしていたのだろうか。


 あのときとは状況が違うけれど、差し出された善意を振り払ったときの彼の悲痛な声を思い出して、胸がひび割れそうに痛んだ。

「ごめん。ごめんね、ジェイソン……」

(ごめんね、クリストハルト)

 本当は、縋りたくて仕方がなかったのに。

 助けてと言ってしまえば、それまで一人でなんとかしようとしてきたことが無駄になってしまう気がして、頑なにそれを拒んだ。

 初めて共に夜を過ごした日以降、なんとなく仲直りしたつもりでいたけれど、よく考えればそのことを謝ってもいないまま。


 こうして彼が死んでしまってからそのことに気づく自分が、情けなくてたまらなかった。


「弱ったな」

 いつの間にか席を立って、エヴァンのすぐ横に来ていたジェイソンが、柔らかく苦笑する。

「お前にそんな顔させたなんて知られたら、またあいつに怒られる」

 ぽん、と頭に手を置かれて、わしゃりと頭を撫でられた。いささか乱暴な手つきに、遠い過去の記憶が蘇る。泣いているアイリスによくこれをやっては髪型が崩れると怒られていたけれど、実はこれは彼なりの慰め方だったのかもしれない。今気がついた。

「君にこれをやられたのは、初めてだな」

 呟くと、ジェイソンがふん、と鼻を鳴らす。

「だって、お前にはあいつが常に張りついてただろ。おかげで俺の出る幕がなかっただけだ」

「そうだっけ?」

 記憶を探る。クリストハルトとジェイソンと三人でいることは多かったけれど、言われてみればジェイソンと二人きりでいることは少なかった気がする。

「本当、お前のことになるとうるさいやつだった。そのへんは気もち悪かったな」

「気もち悪いって」

 ひどい言い方に眉をしかめるが、ジェイソンはうるさそうに唇を歪めた。

「気もち悪いだろ。ちょっとお前と近い距離で話してるだけなのに、全身で威嚇してくるんだぜ?顔は笑ってるのに目が笑ってなくてさ……ほんと怖かった」

「クリストハルトが?」

 ちょっと信じられなくてジェイソンを見上げる。話を盛り上げるために誇張した表現をしているだけではないのか。

「昔からだよ。学園に入る前くらいから、そんな感じだった。ずっとお前にべったりで、なんかもう……お前が可哀想になったくらい」

「そんなに前!?」

「友達、いなかっただろ?あいつのせいだよ、少なくとも半分は」

 憐れみの目で頷かれて、エヴァンは絶句した。


(ああ、本当、君ってやつは……)


 まるで、荒れ果てた地平に、恵みの雨が降ってきたかのようだった。

 暗い暗い闇の中に、一筋の光が差したようだった。

 愛おしさと、それ以上の言いようのない感情が、熱になって喉元を押し上げる。

 耐えきれずに目元を覆った手の隙間から、雫が幾筋も滴り落ちた。


少し短くなりましたので、もう一話投稿します。

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