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生徒会選挙

 いよいよ生徒会の選挙が開催される。

 一年生からは書記二人と会計二人の四人を選出することになる。

 と言っても、六組の人間には関係無い。現会長の言質もとってある。

 なんなら今度、見学じゃなくて出撃してみるかい?


「生徒会の人も大変そうだよねぇ」

 響がしみじみと言う。

「まぁね。ただ、あのジョウ先輩みたいに楽しんじゃってる人もいるからねぇ」

 セトルリさんは校内事情にとても詳しい。

 いわゆる校内カーストとかと無縁な、地雷原ならではの情報源があるらしい。なので校内トップカーストから、底辺ぼっちの事情まで、しっかりと情報を握っている。

「あはははは。あの人、彼女さんを取っ替え引っ替えなんだっけ?」

「彼女以外にも、エッチなことするだけの女性とかもいるよ」

「むぅ。みんなで文香ちゃんの事、守ろうねっ」

 六組の宝、矢田文香。奇跡の五十代。まぁ、魔法使いだから年齢はもう関係無いけど。


「で、選挙っていつなんだっけ?」

「来週の水曜日の午後だよ。体育館で最終演説してからの投票。開票はその後選挙管理委員会がやって、翌日には報告会の予定」

 便利だセトルリ。一クラスに一人は欲しいぞセトルリ。


「セトルリのお勧めの人とかいるの?」

「あー、一年の方はね、四組時代仲良かった娘が一人立候補してる。会長戦は、男子と女子の一騎打ちなんだけどね、できれば女性会長になってくれると嬉しいかな? いや、男子の方の副会長がさ、割とセクハラ体質なの」

「あー、それは却下だねぇ。会長と言いその副会長と言い、なんでそんなのばっかり権力持とうとするのかねぇ」

「権力あるとやりやすいんじゃないの? そーゆー事がさ」

 

 ちなみにセトルリさんも標的になったことが有る。

 ただ、ニマァっと笑い、ハサミを手にして

『これ切って吉野くんに届けたら、アタシの方見てくれるかなぁ……』

 って副会長のズボンの前に座り込んだら、えらい勢いで逃げていった。

 無敵の人、つよい。

『無敵じゃないしっ! 今はとても大切な人だらけだから、アタシは最弱雑魚嫁の人だし』


 雑魚嫁とか初めて聞いたワードだわ。

 まぁ、婿が六人も七人もいるんだから最弱雑魚なのはその通りか……


「じゃ、会長戦は女の人の方ね。よしよし。でセトルリのお友達にも入れてと……ありがとう。わたし、学校の中の事イマイチよくわからないから助かったわ」

「仕方ないよ。響の忙しさは女子高生の忙しさじゃないもんね」

「でも、学校好きだよ。わたし。クラスのみんなが大好きだし、先生も大好きだし、嫁のことも愛してるよっ」

 セトルリの事をぎゅーっと抱きしめ、つむじの匂いをかぐ。

「はぁ、いい匂い……」

「って、嗅ぐなー! 嗅ぐのは尚子だけにしとこうね?」

 いや、それも酷くね? 今の尚子なら喜んで頭差し出してきそうだけど。


 その尚子は直美と一緒に出動中だ。たぬきとうさやはバックアップと指揮の学習で一緒に飛んでいっている。

 響とセトルリは自習なのだが、セトルリの申し出で響による魔法理論の学習を進めている。

 休み時間が終わったら、また勉強の続きだ。

 魔法を教えようとすると

『ここに、バーンっと網を張るようにして、でこんな感じにぐわわーっと力を流し込んで……』

 みたいな超感覚派のおバカな授業をする響だが、魔法理論となると、きちんと順序立てて説明してくれる。

 お莫迦だが、バカでは無いのでこんな訳分からない人間に仕上がってしまった。


「じゃ、次ね。この次元関門から取り出されるエネルギーは、さまざまな形態を取ることができます。基本的には全て素粒子の形で出たり入ったりするから、粒子そのものや、その運動量をエネルギー源とするのが制御しやすいです。電子とか熱とかね」

 レールガンの電子雲や、エアコン魔法の空気の加温や冷却がその類だ。

「で、ここからが本題。あちらから持って来られるエネルギー量って、ほぼ上限がありません。なので、例えば今わたしが無制限で『とある魔法』を発動したら、多分地球がなくなります」


 無制限Non-Massダメ絶対っ!

「響先生っ、ちびっても良いですか?」

「セトルリは可愛いから許すけど、徹底的に恥ずかしいことするよ?」

「先生、我慢しますっ!」


「話を戻します。そこで膨大なエネルギーを、他の方法で消費しながら魔法を発動させることがあります。これが普通のファイヤーボールです」

「この、ステータス・オープン魔法のメニューに有るファイヤーボールもそれですか?」

「それです。世界中にいる、自力でファイヤーボールを撃てるようになった方々も、全員同じ方法で発動しています。じゃ、その発動原理を分解して見てみましょう」


 ファイヤーボールを発動する時、人は無意識に『燃える物』を求める。

 しかし関門から出てくるのはただの素粒子の集まりだ。

 そこで、取り出してくる素粒子を数種のクオークとレプトン、π中間子等に変換し、あらかじめ合成した上で原子を構成、質量変換されたエネルギーは必要以上の破壊をもたらすことなく、地球上へと顕現することになる。


「それが良く響先生の言う、炭素の籠ですか?」

「はい、その通りです。科学の世界ではフラーレンC60とかバッキーボールとか言われています。丈夫で単純、電気もよく流れてとても取り扱いしやすい物質です。ちょっと待ってね」

 アイテムボックスからシャーレを取り出すと、その上に手を置く。

 手の中からさらさらさらと、焦茶色した粉が落ち始めた。

「これが炭素の籠だよ。吸い込むとあんまりよろしく無いから、近づかないでね」

 シャーレに蓋をすると、セトルリに渡してきた。

「ファイヤーボールを撃つ時は、まずこれを作って、ここに火をつける形で発動しています。これを作らないで発動すると、地球破壊爆弾になります」

「ひぃっ……」


 そんな感じで、セトルリを脅しながら一日を終えた。


        ♦︎


 翌週、水曜日。投票日。

 投票は午後から。そして、六組の面々は……


『瑠璃ちゃん、美智子です。そちらにスライムが一群抜けました。撃てるようなら撃っちゃって!』

『セトルリ了解っ、行きますっ、ファイヤーボールっ!』


 ズボァッ!


 燃えた。盛大に燃えた。

 響の理論授業を受けた後、セトルリのファイヤーボールの威力が爆発的に上がった。

 計測の結果、Non-Mass化はしていないので、単純なファイヤーボールの威力である。

 世界の響や、魔力お化けの尚子に近いほどの威力のファイヤーボールは、おそらく世界中の魔法使いの中でも五指には入ってくるのではないだろうか。

 撃った本人がびっくりする威力で、セトルリはスライムを燃やしまくった。


 あと、家も二軒ほど燃えた。


 生徒会長は、無事に女性会長が当選した。

 セクハラ大王は落選、生徒会から引退することになった。

 また、セトルリのお友達も無事に書記になり、セトルリの直接の情報源が生徒会内部へも入り込むことになった。

 生徒会選挙よりもセトルリの魔法の威力の方がヤバいな……でも、目の色変える制御とか上手だし、素質あるのかなぁ?


 ただのマイクロマシンの気まぐれかも。

 それではまた、お会いいたしましょう。

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