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初出撃

「おはようございますー」

「おはようございますですわ」

「おっはよーございまーす!」

 少女たちの朝の挨拶が、朝の滑走路に響く。

 登校後、すぐに基地へと移動した六組の生徒たちは、担任に先導されて対策室へと入ってきた。

「おはようございます。理沙さん理沙さん、さっき麻紀さんから連絡があって、今日は来らんないって言われました」

「おはよう。対策室(こっち)にも連絡きたわよ。昨日のアレの処理、まだ終わってないって」

 昨日のアレ……オーガが空から降ってきた奴だな。

「昨日麻紀さん帰ってこなかったから、心配なんですよね……」

「大丈夫よ、あの娘、ああ見えても大人の女性だからね。更に魔法使いなんだし心配ないわよ」

 魔法使いなら、お肌の曲がり角過ぎてても大丈夫だしね。

 

「さてと。それじゃ、今日は茨城県千葉県管内、および近県で脅威レベル(アラートコン)2以下の魔物対応を、実戦実習として行います。もっとも、魔物が出なかったら出動しませんし、出ても脅威レベル(アラートコン)3を超える場合は響ちゃんのみの出動になります」

 とうとう始まった実戦教育。この間の水着回で、一角うさぎ討伐に向かった時は、あれはノーカンだ。車酔いでそれどころじゃなかったし……


 六人の少女たちの育成レベルには差がある。

 特に自力で魔法開発をしてきた直美は、魔法の取り扱いにも熟達し、実戦経験も二度あったりするほどの熟練者になってきている。

 それに対し、魔法使いになって日が浅いセトルリは、まだまだ発動時間も制御も発展途上だ。威力だけはモリモリ上がっているのだが……

 本人曰く

『ここから、魔法も身体もバインバインに成長するのさ。旦那様たちがあたしに夢中になるぐらいにねっ!』

 とか言っている。魔法はともかく身体がバインバインは考えづらいが。

 セトルリはうさやと共に、華奢方向に振り切っているため、この先の身体的成長はそれほど望めない気がする。

 

『その華奢なのがわたしの嫁の良いところの一つなのにっ!』

 

 は響のセリフだった。

 響もねぇ、身長低ければ、華奢なイメージだったんだろうけど……

 今はもう、どこからどう見てもパリコレモデル体型だわ。身長はゴリゴリ伸びるのに無駄な脂肪が一切つかないあたりが、カリスマモデルっぽい。

 いや、話がそれた。実戦訓練の話だった。セトルリがいけない。あとで尚子に折檻してもらおう。


 続いて文香先生が前に出てきた。

「出動指示が来るまでは、課題学習です。これから更に出動等が増えると思いますので、授業内容を更に先行させて進めていきます。じゃ、全員タブレット出してください」

 教科書やらノートやらタブレットやらは、全員アイテムボックスに入れてある。いつでもどこでも授業可能だ。

 魔法使いの脳に慣れ始めたセトルリは、どんどん授業に追いつき始めた。今では『クラスでは六番目だけど、学年ならトップテン入り』ぐらいの学習進捗度になってきている。

 まぁ、凄いのは魔法使いの脳かもしれないが。


 とまあ、そんなこんなで時間を潰していたら、やってきました出動指示。

 近場な上に脅威レベルも低い奴。とっても都合の良い魔物が出てくれた。


「古河市の利根川沿いに、ガリンコハリネズミ十頭未満の群れが確認されました。総員出動します。搭乗開始」

 全員で対策室を飛び出すと、アラートハンガー側からも空自整備部の人と陸自の操縦士さんが駆け出してくるのが目に入った。

 UH-2(ユーツー)にとりつき、生徒六人と文香先生、理沙さんが乗り込む。

 すぐに操縦士さんもやってきて始動手順に入った。


「現場までは二十分以内に到着します。今入ってきた情報では、魔物は利根川と渡良瀬川の合流地点で、河川敷の草むらに紛れてしまって見失っている様です」

 理沙さんから現場の説明があった。

 続いて先生からの作戦指示が出る。

「沢井さんはバックアップで上空待機、フォワードとして森河さん、出町さんを先頭に河川敷を索敵してください。両サイドは宇佐美さん、樽木さん。瀬戸さんは後方より手薄になりそうな場所を確認しながら進んでください」

『はいっ』

 全員、きちんと話を聞いている。

 魔物討伐には危険が伴うことは、全員がすでに身をもって知っていた。


「魔物を刺激しないように少し離れた場所からエントリーしてください。高度100ftから飛び降ります。あと二分!」


 この距離ならば、もう響にはどこに何がいるのかが全て見えているが、他の少女たちはまだ

『あー、なんか魔物っぽいのがいるような?』

 ぐらいの解像度でしかわからない。

 それも近づいていけばすぐに鮮明になっていくのだが、やはり響だけはレベルがちょっと違っている。


「間も無く到着するわよ。スタンバイ!」

 ここからは指揮官(コマンダー)の理沙さんの出番だ。

「ドアロック解除、開けてください」

 ドアは文香先生が、小さな身体をフルに使って開けてくれた。

「エントリー、スタート、ゴーゴーゴーゴーゴー」

 少女たちが飛び降りていく。

 五人が高度を下げていき、最後に飛び出した響だけが河川敷上空へと駆け上っていった。

『総員、小川です。先ほどの作戦通り、ナオナオの二人を先頭に、たぬきちゃん、うさやちゃんがウイングへ。瑠璃ちゃんバックアップ。何か感じたら報告あげて』

『理沙さん、直美です。魔物の数はこれ、十匹超えてます。カウントできる範囲で十四匹。それほど散らばってはいません。前方五十メートルぐらいの場所に、それなりに集まってます」

『直美ちゃん、ありがとう。総員、横隊へ遷移。瑠璃ちゃん、ナオナオの後ろまで上がって。たぬきちゃんは川沿いまで上がって、うさやちゃんは土手から逃げられないようにカバーを。直美ちゃん、狙えそう?』

『理沙さん、直美です。草が多くて直視はできないです。この可燃物の山じゃ火はまずいですよね?』

『直美ちゃん、火はやめておこう。総員、火魔法は避けてください。高度取れば射線取れそうかな?』

『理沙さん、尚子です。わたしの方からだと少し草が薄い気がします。少し手を出しても良いですか?』

『尚子ちゃん、理沙です。では尚子ちゃんが一手目をお願いします。これで敵がばらけたら総員で対処。ただし、味方撃ち(フレンドリーファイヤ)には充分注意してください。常に仲間の場所と敵の場所を意識して。状況開始っ』


 尚子はレールガンによる攻撃を決意する。

 意識をレールガンへと向けると、尚子の前のマイクロマシンが活性化し、次元の向こう側からエネルギーとしてレプトン粒子を取り出し、電子へと変換していく。

 更に周辺に有る分子へと干渉し、作り上げた電子を叩き込みながら電子雲を形成していく。


 マイクロマシンの活性化……魔力の増大を受け、魔物たちが緊張していくのがわかる。しかし、遅い。


 成長した電子雲製の銃身(バレル)は、重なっている数頭の魔物へと向けられた。その電子雲の中へ、アイテムボックスから取り出された鋼鉄の弾が収まり、一気に電子の流れが励起された。

 稲光の様な強い輝きと、ジュール熱により膨張した空気の衝撃波で、弾丸が発射されたことがわかった。

 秒速8kmで発射された鉄球は、手前の草むらを焼きはらい、一頭目の横っ面を撃ちぬき、二頭目の臓腑を抉りながら三頭目の肺を削り取り、地面に大穴を開けて止まった。

 一頭目と二頭目は即死、三頭目はまだ意識はあるものの、反撃するほどの力は残っていないようだ。

 その他の魔物は防具でもあり武器でもある『針』を広げ、一頭目二頭目から離れる方向へと走り出した。

『直美です。見えました。射撃に移ります』

『うさやです。土手の上から魔物を確認、攻撃します』

『たぬきです。川の警戒を続けます』


 数秒後に、直美、うさやの攻撃が始まった。それぞれが三発ずつ発砲、四頭が倒された。

『直美です。残り七頭、下がっていきます』

『たぬきちゃん、飛んで50m程先の川っぷちに先まわりしてもらえるかな? 瑠璃ちゃん、たぬきちゃんのカバーで左ウイングに入って』

 理沙さんの指示は早い。ポジション変更もスムーズに、たぬきが先まわりすることができた。


『たぬきです。来ました。四……いえ、五頭やります。敵後方にフレンド無き事を確認。いきます』

 たぬきはこの間の河童大戦で、大量の魔物と正対し、倒す経験を積んでいる。五頭ぐらいではもう驚くことも無い。

 パンッパンッパンッパンッパンッ

 五つの銃声と共に、五頭のハリネズミが倒れた。

『セトルリです。こちらに一頭来てます。や、やりますっ』

 たぬきが五頭を倒したことで、そちらに向かおうとしていたハリネズミが一頭、セトルリの方へと向かってきた。

 正面(ヘッドオン)での接近戦。訓練では数えきれないほどやった位置関係だ。

「バンっ」

 セトルリが発動子を発声すると、ほぼ同時にハリネズミの身体に大穴が空いた。

 セトルリが初めて魔物を倒した瞬間だった。

 生き物を殺す感傷などは何もない。魔物は魔物だ。あと、セトルリかわいい。


 残りは一匹。セトルリの攻撃音で再びUターンした魔物は、直美の前に姿を現し、即座に射殺された。

『直美です。今ので最後だと思います。十四頭、駆除しました』

『直美ちゃん、了解。響ちゃん、理沙よ。観測は?』

『響です。近くに魔物は残っていません。全数駆除できました。みんな、おめでとうっ! かっこよかったよっ!』

 わっ!

 全員から歓声が上がった。

 六組の生徒による初めての実戦訓練は、こうして極めて順調に終わり、全員が魔物を駆除する経験をすることができたのだった。


 ちなみに、昨日の後始末に出かけた麻紀が沢井家に帰ってきたのは、さらに翌々日であった。

「足りない……響ちゃん成分が足りない……」

 その日、響は夕方から寝る前まで、ソファー前の床に座らされて、ひたすら頭なでなでされまくったらしい。

 六組のみんなも着々と国の戦力になっていきます。

 こんな女子高生が戦力とか、世も末ですよね……いや、実際世も末だからこんなことになってるわけですが……

 それではまた、お会いいたしましょう。

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