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航空無線従事者試験

 直美、尚子、セトルリの航空無線通信士の試験が間近に迫ってきた。

 直美と尚子はもう、全然問題なさそうである。

 しかし、セトルリはまだ何となくテンパってる気がする。


 というわけで、特訓デーである。

「はーい、じゃ、この問題解いて、正解だったら尚子に頭撫でてもらえるよー」

「やる、あたし頑張るっ!」


 セトルリさん、頑張った。それはもう頑張った……不純な動機と言われようが……って、尚子さん、頑張ろうとして勉強してるセトルリさんの頭、何ナチュラルに撫でてるんですかっ! 先に御褒美とか、意味なく無い?

『可愛い嫁撫でて、何が悪い?』

 開き直りやがった……


「うーん、別のご褒美ねぇ。じゃ、たぬきを揉むとかは?」

 響がとんでもないこと言ってますが、レーティング的にアウトです。別のにしてください。

「たぬきの揉み心地、めっちゃいいのに……」

 そーゆー問題じゃありませんっ!

「吉野くんを勝手に貸し出すわけには行かないしなぁ」

 ちらっと横目でたぬきを見ると

『何のことかしら? わたしは別に関係ありませんよ?』

 みたいな表情してやがるし。


「よし、じゃ、従事者試験に合格したら、セトルリは尚子と二人きりでデートだ。これならやる気出るかな?」

「よし、セトルリ、最初から復習するよっ! じゃ、苦手な英語問題からっ!」

 むしろ尚子のやる気が上がった。

 尚子のセトルリ依存も少々危険域だな……注意していかないと……


 英語は英文、英会話と、それなりに難しい言い回しが出てくる。しかも専門用語がゾロゾロ出るのが特徴であり、学校で習っていない単語が並びまくる。

 この辺り、実は百里基地で勉強するとみんなすごく丁寧に教えてくれるのだが、(たいら)基地司令が乱入してきてお開きになってしまう事が多すぎて困る。

 まぁ、セトルリは平司令の性癖に突き刺さるんだろうが……


 工学系は、徐々に使いこなし始めた魔法使いの脳のおかげで、丸暗記に成功しつつある。過去問読むだけで全部覚えられるのは、チートとしか思えない。

 やってる自分が……出来ちゃってる自分が信じられなくなっているセトルリさんだった。

 元々、中央高校の普通科はそんなに学習レベルは高くなかったので……


「やっぱ英語が難関だなぁ。もう、すれ違った外国人同士の会話が、意識せずとも理解できるぐらいにならないと厳しいからなぁ」

 ちなみに、響はほぼネイティブレベルで英語を操るし、たぬきとうさやもそれに近い。

 直美と尚子はまだまだ発展途上なものの、聞き取って返答するぐらいは問題なくなってきている。

 セトルリはまだ、脳内で翻訳しないと答えられない。聞いて日本語に翻訳、回答考えて、今度は英語に翻訳。ツーテンポ遅れてしまうのだ。

 これを一つにまとめられれば一気に理解が進むんだろうけど……


 せめて試験対策として、想定問答を繰り返していく。

 たまに響の出動があると、響と指揮との間の会話も全部モニターして確認していく……


「って、指揮は基本日本語じゃないっ!」

「おお、いいところに気がついたね……確かにその通りだ!」

 響が、今まで気が付いていなかった様なことを言う。

「いや、気がつかないわけないでしょうがっ!」

「慣れると英語と日本語の垣根が崩れて、気持ちよくなってくるから大丈夫っ!」

「いや、それもう何が大丈夫なのかさっぱりわかんないしっ!」

「うーん……英語と日本語の違いがわからなくても生きていけるから」

「いや、違いは判ろうよっ! 区別ぐらいしよう。お願いだから!」

 セトルリと響の会話が頭悪すぎて頭痛い。

 

「管制とのやりとりは英語だよ。だからがんばろ。ね」

 尚子が癒しだわ。

 

 それでも徐々に英語にも慣れていくセトルリ。そりゃ、魔法使い脳のチート力もあるけど、それ以上にちゃんと努力してるのだ。このファッション地雷は。もう全然地雷じゃない事がバレバレだけど、地雷ファッション可愛いから誰も指摘しない地雷娘は、努力家なのです。


 ただし、響があまりにボケまくる時には、目の色を物理的に変更して、ハイライトを消したりするのは、見てて怖いです。


「瑠璃ちゃんの、その目の色変える魔法、いいよねぇ。わたしにも教えてくれないかしら」

 って美智子さん、今勉強中だから。対策室の良心の美智子さんがそんなんじゃだめでしょう。理沙さんが言うならわかるけど。

 まぁ、理沙さんより美智子さんの方がオシャレに敏感なだけなんだろうけど、今はお勉強に集中させてあげて?


「良し、じゃ、試験合格したら、対策室の予備費で好きなもん買ってあげよう! そしたら、その魔法を美智子に教えてやってね」

 って、理沙さん、頭悪そうな御褒美やめて……その手の即物的な御褒美は、教育上あまりよろしくありませんよ?

 まぁ、セトルリさんの欲しがるものが、どんなものなのか興味はあるけどさ……

「あ、税込で一万円以下でお願いね……小口清算で処理できるとこまでで」

 ちょっと日和ったな……理沙さん。


「うーん……じゃ、考えときます。まずは合格目指しますよ。あたしは。尚子と、直美と、一緒に合格したいし……」

 いい娘だな。セトルリ。

「わたしも合格します。あ、合格したらスープラのフライラインが欲しいです」

 って、やたら即物的だなおいっ! そこの釣り師さんやい。

「わたしは嫁とデートできればそれで良いです。あ、デート代なら欲しいかも……」

 電車代やら食事代やらなら、小口清算でどうにでもなるから大丈夫……って、大丈夫じゃないよっ! 多分厳密にいえば業務上横領だよっ!


『平気! ほら、これ官邸機密費にできるからバレないっ!』

 ダメだろそれっ! 国民として!

 麻紀さんあたりにバレたら叱られない?

『麻紀さん、こないだ響ちゃんとデートするのに使ってたし』

 お前ら全員そこに正座しろ!

 少しは遵法精神とか覚えようよっ! 仕事は正義の味方みたいなことやってるのに……


 まさかこんなに乱れきった綱紀だとは思わなかったわ……


        ♦︎


 翌週航空無線通信士試験が行われた。

 二日間にわたる試験を終え、三人ともかなりの手応えがあったようだ。

 特にセトルリがもうね、浮かれポンチで使い物にならないぐらいには自己採点良かったらしい。


「デート、デート、尚子とデート、デート、デート、直美とデート、デート、デート、みんなでデート!」


 どんなとこ行きたいのかね。セトルリさんは。

 そんなこんなで、夏休み最大の障壁を乗り越えた六組だった。

 合格発表は四週間後。楽しみだね!

 英語、きちんと使いたいですよね。

 外国の方と英語でお話ししてると、ネイティブ英語話者とはそこそこ話せても、あっちも非英語話者だと一気に難しくなるの、キツイですよね……


 それではまた、お会いいたしましょう。

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