夏休みの思い出
長かった夏休みもいよいよ終わる。
この一ヶ月と少しの間、一年六組のみんなもいろいろな思い出を……思い出を……
「なんかさ、休みの間、遊んだっけ?」
習志野へ向かうヘリコプターの中で、響がポツリと言った。
「夏祭り行ったり、海行ったり?」
「つまり、ゴブリンと戦ったり一角うさぎと戦ったりしたのを『遊んだ』と称するわけか」
「うー……」
確かに、夏休みっぽい思い出が何もない。
あとはひたすら訓練に明け暮れたのと、試験勉強に明け暮れたのと……
「あ、そういえば超音速で飛ぶこと覚えたっ」
「いや、そんなんできるの響だけだし!」
「一瞬で否定された! しかも愛する嫁にっ!」
いや、今のはセトルリが正しい。響が間違ってる。
「でもでも、セトルリも試験頑張ったんでしょ? 手応え十分なんでしょ?」
「まぁねー。もう百里のタワーには足向けて寝られないけどねー」
管制科の人に、めちゃくちゃしがみついて練習しているセトルリは、必死すぎて可愛かった。
多分、管制塔の人の性癖、何人かは捻じ曲がったんじゃないかと思う。
まぁ、仕方ない。セトルリ可愛いもん(婿連談)
「来月からは、わたくしたちも出動かかる可能性がありますのよね……」
うさやの言う通り、響以外のみんなも、異世界生物対策で出動する可能性がある。
ただし、基本的に県内に限られる上、まずは簡単な魔物の討伐から始まるとは思われる。
「来月と言えば、理沙さんと美智子さんちの方の神社のお祭り、みんなで行くんだっけ?」
遊びとなると頑張るセトルリが、確認するように聞いてきた。
「五年に一度の大祭だとかで、みんな連れていくって言ってたね。ただし、いつでも出動できる体制はとるって」
響が思い出しながら答える。
「理沙さんたちの家ってどこだっけ?」
「東京、向島。昔の遊郭街なんだって」
東京下町、街道から一本外れたら、交通量もそれほどないゆったりとした街である。
「あの二人も幼馴染みなんだっけ?」
尚子がコテンっとくびをかしげながら聞いてきた。かわいい。
「らしいねぇ。うちらで言ううさたぬ吉野くんみたいなもん? わたしは五年生からだからね」
理沙さん美智子さんも幼稚園からのお付き合いらしい。それであの仲の良さは、なかなか羨ましい。
「四十年以上の付き合いかぁ、すごいねー」
「あ、歳のことは言わないでいてあげよ? ほら、見た目が若くなった分、ますますセンシティブになってるし……二人とも」
マイクロマシンによる若返りも良し悪しである。
「あ、響は免許とったじゃない。あれは楽しかったんでしょ?」
今度は直美が口を開いた。
「うん、あれは楽しかった。オートバイもめっちゃ楽しい! でも、通学に使えないんだよね……うちのがっこ」
「明確にバイク通学禁止って校則あるからね」
「免許取らせて貰えただけでも、良しとするかぁ。うーんうーん」
良しとしましょう。
ちょっと前までは3ナイ運動とか4+1ない運動とかで免許どころじゃなかったんですから。
「実はね、わたしも免許取ろうかと思ってるの」
「え? 直美もオートバイ乗るの?」
「んーん。そっちじゃなくてね、小型船舶操縦士免許の方」
ああ、本業釣り師でしたね。あなた。
「あれも十六歳から取れるから、やってみようかなって。霞ヶ浦だとレンタルボートも借りやすいしさ」
「そっかぁ、お船かぁ。それも楽しそうだね。お船の免許取ったら、みんなのことも乗せてくれるかな?」
「あ、それは任せてっ、オートバイと違って何人も乗れる船動かせるし」
さすがに霞ヶ浦で借りられるお船だと、六人乗れるのは少ない気がするけどね。
「けどまぁ、まずは新学期に向けて、予習と復習しとこうか。万が一授業遅れたりすると、やりたいこともできなくなっちゃうよ」
響はこーゆーとこが真面目でいいこだから、大人ウケがめちゃくちゃ良いのだ。
男性とか女性とか関係なく、大人ウケ最強はやはり響だ。
幼児受けも実は響が一番だったりするが、それはただ単に精神年齢が近いげふんげふん。
男受けはたぬきとセトルリが双璧、女受けは尚子が一歩リードかな。
委員長マニアには直……
『ストーンバレット飛ばしましょうか?』
な、なんでもありません。
「文香ちゃんにも、もう十日以上会ってないしねぇ。また若返ってそうで怖いよね。ふみかちゃん」
大丈夫、あなたのご両親ほどではないですから、絶対。
「文香先生はさぁ、旦那さんいるんだよね? 今どんな気持ちなのかな……旦那さん」
「旦那さんより、むしろ息子さんとか娘さんの方が気になるかもしれない……下手するとあれだよ? 娘より若く見える可能性もあるよ?」
「息子さんの彼女さんより若いとかは有りそう……」
「まぁ、あと三日ぐらいで会えるんだから楽しみにしてようよ。みんな大好きでしょ? 文香ちゃんのこと」
「そりゃ、あたしの旦那だし。大好きに決まってる」
あんたの旦那多いな。ほんと。
とまぁ、こんな感じで会話していくわけですが、同じ機体に乗ってるわけですよ。吉野くんも。
あーあー、もうお顔が真っ赤です。
ただ、それでも、視線の先はたぬきにロックオンなのね……その一途さは尊敬するわ。
『間も無く着陸します。準備お願いします』
操縦席からの指示が来た。
さぁ、今日も訓練が始まる。夏休みはあと三日。みんながんばれ。
吉野くんもね。
夏休み、残り三日……
大抵、宿題片付いてなくて大騒ぎでしたねぇ……
最終日とか、徹夜が当たり前で……
それではまた、お会いいたしましょう。




