コミコミパック
コミコミパックはお得な魔法詰め合わせだ……って、誰だよ! こんな名前にしたのっ! 多分響の姉だよっ!
コミコミパックは安全性に配慮されたお得なパッケージである……って、安全か?
威力制限型レールガン? 5.56mmの口径制限と8km/sの初速制限を守っていても、一発の運動エネルギーは100,000Jにも及ぶ。
これは20mmバルカン砲と、ほぼ同等の威力がある。いや、個人が持ち歩く武装じゃないぞ?
ファイヤーボール? 一撃で軽装甲機動車が原型を留めないぐらいに破壊されるが何か?
その上、自力で覚えた魔法よりも圧倒的に出が早く、魔力効率も大幅アップ。
例えば尚子のファイヤーボール。
畳一枚を焼くのが限界だった尚子のファイヤーボール。
しかも、五発も撃てば魔力切れしていたファイヤーボール。精神集中と祈りが必要だったファイヤーボール。
「ファイヤーボール! ファイヤーボール! ファイヤーボール!」
ズドン、ズドン、ズドンっ!
富士の裾野に響き渡る爆発音。
尚子が発生させたプラズマの塊は、百五十メートル先の目標へと命中して、消し炭へと変えてしまった。
コミコミパックを全国の実働魔法使いに使ってもらうための事前試験が繰り返されている。
当初は志願した自衛隊員によるテストが行われていたのだが、攻撃魔法については『自力で攻撃魔法を使えていた魔法使い』との間に、明確な能力差があることが判明した。
例えばファイヤーボール。
威力はそれほど大きくは変わらない。軽装甲機動車は無理でも、古い乗用車を吹き飛ばすぐらいなら可能だ。
しかし射程距離は半分以下、下手すると三分の一だ。
炎を浮かべてから発射までにかかる時間も数倍。二発目、三発目を用意するのにも時間がかかる。
例えばレールガン。
やはり威力はそこまでは変わらない。
しかし、当てられるかどうかは大きく違った。
今までファイヤーボールしか使えなかった尚子だが、レールガンで700m先のマンターゲットを外すことはほぼない。
毎秒五発程度の発射速度で、その距離に確実に当てていく。
これが、もともと魔法使いではなかった人々が試すとどうなるか。
300m先のマンターゲットは、割とフラフラと外す。なんなら150mでも外すことがある。
発射速度は二秒に三発ぐらいがせいぜい。時間がかかる人は五、六秒に一発だ。
年齢による差も大きかった。
若ければ若いほど優秀な成績を収めた。しかし、それでもネイティブな魔法使いと比べると差が大きすぎた。
ちなみに、理沙美智子も試したが、まぁ、自衛用がいいとこだ。危なくて普段は使っちゃダメなやつだわ。
小波師匠は例外的に、新卒女性隊員並の成績を叩き出しているが、それでも人間の範疇だった。
もっとも、それ以外が規格外すぎて誰も勝てないんだが……
たぬうさ? tuned by HiBiKi のせいなのか、若さのせいなのかは判らないが、後からインストール組の中では最高成績を出している。
ということで、検証試験に女子高生が引っ張り出されてきた訳だ。
「はい、出町さんありがとう。今日のテストはこれで終了です。帰りは百里まででいいですかね?」
今日東富士に来ているのは尚子だけだ。
たぬうさは百里の屋内実験場でテスト中。セトルリは響がつきっきりで訓練中。そして直美は委員長の仕事をしている。
『していません』
いや、だって文香先生のお手伝いでプリント作りとかして……
『先生に頼まれたから手伝ってるだけで、委員長の仕事じゃありません』
明日は終業式。明日配るプリントは、まだまだ残っていた。
翌日、子供達と文香先生は終業式で学校だ。
ただし、もしもスクランブルが発生したら、それが優先になってしまう。
終業式は幸い何事もなく、そのまま一学期を終えることができた。
六人で文香先生に挨拶して、百里に向かった。魔法慣れに時間がかかっているセトルリの訓練と、アラート待機のため。そして夏休みの宿題のために。
「あ、響ちゃん。コミコミパックの全実働魔法使いへのインストールは決定したわ。これから順次富士学校まで呼び出してインストールするみたいね」
理沙さんが最新情報を教えてくれた。
「東富士でやるんですか?」
「さすがにあの魔法はポンポン人に教えられないから、富士学校にしか置かないみたい」
その富士学校の中でも奥の奥、とっても深く隠された一角で、一人ずつ丁寧に読ませるらしい。
「一番手は桜井さんだってさ」
「おぉ! 北海道の守備はほんと大変そうですもんね!」
「まぁ、ここのところ特にね……」
「桜井……小梅さんでしたっけ?」
「そそ。小梅さん。実はわたしと美智子の出た小学校の名前が、小梅小学校なのよね。だから親近感湧いちゃって大変よ」
理沙と美智子の母校は、墨田区立小梅小学校。もっとも、二人の出会いはさらにその前の幼稚園時代だったが。
「東富士ならここで乗り換えするのかな?」
「うーん……V-280で直接行っちゃうんじゃないかな。流石に」
響は小梅に短期間に二回も会ってるのに、まだきちんとお話ししていない。
そんな暇はなかったから仕方ないのだが、どうせだったらもっと仲良くなりたいなぁ……と思う響だった。
明日からは夏休み。基本的に百里か習志野に詰める日々だろうが、一度くらい北海道に遊びに行きたいな? とか思う響であった。
そう、明日からは夏休み。
もう、一週間ぐらいたぬきを見かけていない吉野くん。たぬきに会えないままで夏休みに突入してしまった。
うん、吉野くん、泣いてもいいよ?
魔法が犯罪に使われると、本当に手に負えなくなるでしょうね。
しかも、便利な『封魔の手枷』とか『封印魔法』とか、ありませんし……
日本ならともかく、海外ではきっと酷いことになってるんだろうな……
それではまた、お会いいたしましょう。




