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東京ドームと後楽園ゆうえんち

『ぴんぽーん……緊急、緊急、緊急。一年六組沢井響さん、至急百里基地へ。緊急、緊急、緊急、一年六組沢井響さん、至急百里基地へ』


 ホームルームが終わり、一時間目からの習志野での訓練準備を進めている時だった。

 響は後ろを振り返り矢田先生の顔を見た。

「沢井、すぐ飛べるな? 今日の訓練は変更、沢井の実戦を全員で見学する」


 今日の授業が変わった。


 響はいつも通り、教室の窓から飛び出すと一気に高度を上げて行く。

「ヨシ、全員UH-2(ユーツー)に搭乗。すぐに追う」

 矢田先生の指示でクラスの残り五人が待機しているヘリコプターへと急いだ。


 生徒五人と先生を収容したヘリコプターは即座に離陸した。

 と、この間皆で覚えた通信魔法ではなく、レーザー通信で百里から連絡が入った。


『対策UH-2(ユーツー)、こちら百里対策小川です。学習飛行の件了解しました。響ちゃんには直接指示で文京区へ飛んでもらってます。指揮はV-280(バーロー)を飛ばしてもらうので、対策UH-2(ユーツー)も直接文京区へ向かってください。東京ドームです』

『対策UH-2(ユーツー)了解』


『小川さん、矢田文香です。生徒五名と共に現場(げんじょう)へ向かいます。現在の状況いただけますか?』

『お待ちを……上げてください……お待たせしました、小川です。東京ドーム内にグリーンスライムの群れが発生していると連絡がありました。建物内部なのでファイヤーボールを使えないため、現場近くの魔法使いで対応できない様です。これから響ちゃんに突入してもらいます』

『矢田了解。生徒もドームに入れて大丈夫かしら』

『矢田先生、小川です。現着してから判断します。まずは急ぎましょう』


 百里から東京ドームまでは80km。二十分少々で到着するはずだ。

 響は五分ほど早く辿り着くので、下手すると状況終了している可能性もある。


「では、今日は沢井の実際の戦いを見てもらうことになる。知っての通り沢井は百戦錬磨の強者だ。もしかしたら血生臭い現場に出くわすかもしれんが、魔法使いなら将来確実に糧となるだろう授業だと思え」

「はいっ!」

 皆真剣だ。これは訓練では無いのだ。

 

「間も無く東京ドームが見えてきます。降りられるのは区役所上のヘリパッドぐらいなんで、手前で飛び降りてください。ビルに降りると迂回に時間かかります」

 パイロットが無茶を言うが、このヘリコプターは対策室のヘリコプターだ。すでに全員が短時間なら飛べることを知っているのだ。

「わかりました。高度30ftぐらいまで降ろせますか?」

「はい、ドームのゲート広場上空に停めます。入り口は近いので楽になるかと」


 遥か前方に、利根川上空でUH-2(生 徒 達)を追い抜いたV-280(バーロー)が、ドームに降りて行く姿が見える。

 

 響と理沙の魔法通信もオープン回線で流してくれ始めた。

『響ちゃん、理沙よ。こっちは今着いたわ。中どんな感じ?』

『響です。中はなんか、デロデロです。見た目はもう、緑色したあんかけチャーハンみたいになってます!』

 いや、なんだよその例え。あんかけチャーハン食べにくくなるだろ……

『しかも大盛り汁だく気味です!』

 だからやめてくれよ!

『数はわかる?』

『核の数は一万八千三百四十七個ですね』

 いつものことだが、響の超センスすごいな……

『この空間だけじゃなくて、待合室やら控え室にも入り込んでます。これは焼くのは難しいですねぇ。施設ごと燃えます……』


 数が数だけに、一つずつ核を潰すのは難しい。ただでさえ何でも溶かす危険な生き物なんだから。かと言って、スライムの弱点の火を使うと施設ごと燃え上がる……こんな時は……


『じゃんじゃかじゃーん、お姉ちゃんの知恵袋ー』

 なんか言い始めましたよコイツ。

『えーと、スライムは火に弱い以前の問題で、高温に弱いみたいです! 熱湯で駆除できるって!』

 何だよその情報。そんなんあるなら共有しといてくれよ……

 通信を傍受している全員の総意だ。


『響ちゃん、理沙です。こっちも到着、確かにすごいわね、これ』

『理沙さん、対策は思いつきました。状況開始して良いですか?』

『ちょっと待って、もうすぐ六組のみんながつくから、それからお願い。スライム、落ち着いてるみたいだし』

『了解です』


「あ、待ってくれるみたいね。では、これから降機します。高さは10m弱、安定させながらの落下を心がけて。ダウンウォッシュに逆らわず、機体から離れるまでは絶対に高度を上げないこと。輪切りになりたくなかったらね」

「はいっ!」


 ガシャんっとスライドドアを開け、まず先生が飛び出す。

 ダウンウォッシュに巻き込まれ一瞬高度を落とすが、そこから安定させて15mほど離れた場所に浮く。

「はい、次っ!」

 うさや、セトルリ、たぬき、尚子、直美の順で飛び出し、ゆっくりと降下していく。

 全員、まだまだ轟音と共に空気噴射で浮いているので、あたり一面風ですごいことになっている。


『百里対策小川さん、六組矢田です。全員到着、今エントランスに入ります』

『矢田先生、そのまま入ってください。魔物が薄いのはライト側スタンドなのでそちらに回り込んでください。わたしもそちらに向かいます。響ちゃんはドームの真ん中に浮いてます』

『了解しました。向かいます、それ、みんな走れっ』

 魔法使いになって日が浅いセトルリに合わせ、皆で走る。

 矢田先生の二つのメロンがたゆんたゆんしているが、気にせず走る。

 数百メートル走ってスタンドへ入ると、そこには驚愕の景色が!

「あー、うん、緑のあんかけチャーハンだね」

 尚子が感想を漏らした。

「だね、響のくせに間違ってなかったわ」

 たぬきが酷めの一言をポツリ。

「あたしはヒビキのこと信じてましたし!」

 セトルリさん、ほんと? 何日か一緒に授業受けて、響の言語センスと付き合ったんでしょ?

『だからこそ! ヒビキじゃ無いと、緑のあんかけチャーハンなんて的確な感想は言えないし!』

 あー、それはそうかも。

 まぁ、バカ言ってないで続き行こうか。


「あ、小川さん、全員到着しました」

「はいみんな、よく来たね」

 一瞬振り向いた理沙が声をかけた後、すぐさま響に指示を出していく。

『響ちゃん、状況開始。スタンドライト側……えーと、電光掲示板の右側にみんないるから、気をつけてね』

『響了解、状況開始します! えいっ!』


 ザバっ!


 水が溢れた……いや、お湯が溢れた!


 この広い東京ドームグラウンドに、ザバっとお湯が溢れかえった。

 ドーム球場のグラウンドは1.3ヘクタールの広さがある。

 ここを水深1mの水に沈めようとすると、必要な水は13,000トンにも達する。

 ウォータの魔法は、基本的に大気に含まれる水分を抽出したものであって、これほどの量は時間をかけなければ得られないはず……一体どこから……

『アイテムボックスに、お水はいつもたくさん入ってるんです。で、温度を上げるのは難しく無いから』


 ステータス・オープン魔法の使い手の中で、響にエコ贔屓されてる人たちのアイテムボックス容量は、まぁそこそこの倉庫ぐらいの規模である。

 これが響のスクロール魔法さんの場合どうなるか……

『木星入れて、まだ余る』


 いや、入れないけどねっ! 地球とかそのまま入れられちゃうけど、やんないからねっ!

 ただ、お水は必要になるシーン多そうだからと、たくさんたくさん入れてあった。

 実はまだまだ入ってる。

 そんで、それだけの量を熱湯化して閉鎖空間にぶちまけた。ぶちまけたお湯はさらに加熱を続けられ水蒸気に……


 ぐつぐつと煮えたぎるグラウンドで、浮き沈みするスライム達。

 白く色が変わって沈んでしまったものも多い。

 煮えたぎるお湯は高温の蒸気を周辺に撒き散らし続け、室温を上げ、湿度を上げ、そして空気を外へと押し出して行った。


 響以外の魔法使いは、まだ人間の範疇である。

 酸素がなければガス交換ができなくなり死亡する。

 温度が高くなればタンパク質が変質し、大火傷の上死亡する。


「あ……やばいっ! みんなごめんっ!」

 響は大慌てで手持ちの水を分解、水素を仕舞いつつ酸素を抽出。更に周辺の温度を奪う魔法も発動させた。

 友人達の周りに酸素が供給され、温度がさがりはじめる。

 その瞬間、その事故は発生した。

 後楽園ゆうえんちで、響と握手っ!


 皆さんはこのメンツだと、誰と握手したいのでしょうか。

 響が主人公補正で高いのか、うさやがマルチ属性で高いのか……

 たぬきが吉野くんの組織票で高くなるのか、ダークホースの文香先生なのか……


 それではまた、お会いいたしましょう。

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